2016年1月31日日曜日

牧師の日記から(43「北支区教師研修会に参加して」
12526日、北支区の教師研究会に初めて参加しました。以下はその簡単な報告です。以前属していた東京教区東支区の一泊教師研修会には、最初のうちはほとんど出席していたのですが、神学校の授業と重なるようになってから、最近はほとんど参加できませんでした。千代田教会に転任したばかりということもあって、今年は授業を休講にして参加することにしました。
会場は富士箱根ランドで、早稲田教会までマイクロバスで送迎してくれます。9時集合ということで、月曜日の朝8時半過ぎに、自転車で早稲田教会に向かいました。以前にも紹介しましたが、千代田教会から早稲田のキリスト教会館まで自転車で約15分で行けるので、これが一番早くて便利なのです。この朝メールで送らねばならない原稿があったので、出発の前後バタバタしました。早稲田教会に着いて、飲み物を買おうとして初めて気がついたのですが、なんと財布を忘れたのです。参加費も払えません。急遽、早稲田教会の古賀牧師に2万円を借りて、何とかバスに乗り込みました。今回の参加者は少なく、全部で9名です。ほとんどが旧知の牧師たちですが、私と同じく昨年4月に巣鴨ときわ教会に赴任してきた同志社出身の平井文則牧師は初対面で、隣の席に座って車中いろいろ話しをすることができました。
東名高速から小田原厚木道路を通って、約2時間で会場に到着。快晴で冠雪した白い富士山がとてもきれいです。この施設は、やはり牧師の研修会で何度か来たことがありますが、今回は何の責任もなく、実に気楽です。
今回の講師は新約聖書学者でもある信濃町教会の笠原義久牧師で、「パウロ研究における義認再考」という研究発表でした。これは、従来のパウロ理解が、マルティン・ルターのカトリックの功績主義的な信仰理解を批判する枠組みに強く拘束されて来たことを批判するもので、初代教会と当時のパレスチナ・ユダヤ教の実像からパウロの義認論を改めて見直そうとするものです。主に英語圏の最近の研究(E.P.サンダースやJ.D.G.ダン等)に拠りながら、当時のパレスチナ・ユダヤ教の律法理解が、ルターが主張するような行為義認主義では必ずしもないことを再検証する内容で、とても興味深いものでした。特に、私自身が最近コロサイ書を講解説教で取り上げており、紀元1世紀半ばのヘレニズム・ユダヤ教と初代教会との隣接に関心がありましたので、刺激を受け、勉強になりました。

しかし何と言っても、参加した牧師たちが寝食を共にし、温泉に入り、夜遅くまでビールを飲みながら議論できるというのが教師研修会の醍醐味です。現在の教団の問題、最近のキリスト教界の実情、さらに牧師たちの悩みや趣味の話しにまで話題が及び、実に楽しい一泊二日でした。この研修会は、信徒も参加できるので、関心のある人は来年一緒に行きませんか。(戒能信生)

2016年1月24日日曜日

2016年1月31日 午前10時30分
降誕節第6主日礼拝No.43
     司式 常盤 陽子
    奏  黙 想       奏楽 内山 央絵
招  詞  詩編98・1、3(93-1-18
讃 美 歌  4 
主の祈り  (93-5A) 
交読詩篇  詩編45・1~18
讃 美 歌  277
聖書朗読  創世記21・9-21
祈  祷
讃 美 歌  462
使徒信条  (93-4-1A)

説  教  「神は子どもの泣き声を聞かれた」
戒能 信生牧師
祈  祷
讃 美 歌  457
献  金            大野  剛
報  告
頌  栄  84(二度繰り返して)
派遣・祝福
後  奏         
 
【本日の集会】
教会学校 お話し・戒能直子、奏楽・向山康子
礼拝後、お茶の会、週報等発送作業




2016年1月23日土曜日

牧師の日記から(42「コーヒーか紅茶か、はたまた日本茶か」
先週の牧師の日記の最後に、時折、近くの喫茶店にコーヒーを飲みにいくと紹介しました。すると早速、美味しいコーヒー豆を差し上げましょうと申し出てくださった方がいて、恐縮してしまいました。実のところ、我が家ではほとんどコーヒーを飲まないからです。直子さんがあまり好きではないこともあって、朝食もトーストと紅茶が普通です。
私自身もいわゆるコーヒー通ではなく、美味しいコーヒーかどうかについてはなはだ不案内なのです。ある時、親しい友人に、吉祥寺の有名な喫茶店に連れて行かれ、一杯2700円もするコーヒーを御馳走になりました。トアルコトラジャ?とかいうインドネシアから直接買い付けた希少な豆で、もちろん自家焙煎です。水は井之頭公園の湧水を使用しており、コーヒー茶碗もマイセンの器という触れ込みです。先ず、砂糖もミルクも入れないで飲んでみてくれと勧められました。確かにいい香りがするのですが、飲んでも普通に美味しいコーヒーでした。これが一杯2700円もするのかというのが率直な感想でした。喫茶店のマスターからコーヒーにまつわる薀蓄をいろいろ聞きながら、つくづく自分がコーヒー音痴?だということを思い知らされました。
これとよく似た経験を、中国茶でもしたことがあります。台湾で行われた台湾基督長老教会の国際会議に出席した時のことです。最初の日に、台南市のクリスチャンが経営するお茶屋さんに招待されました。有名な老舗で、海外から来たゲストだというので、昨年の全台湾茶葉品評会で一等賞を獲得したというお茶が特別に出されました。中国茶にもお点前があり、熱湯で茶器を温め、最初に煎れたお茶は捨て、ぬるめのお湯で煎れた二煎目を頂きます。同行した台湾人の牧師たちは、目を閉じ、身体を震わせ、呻き声を洩らしながら感動して飲んでいます。私も恐る恐る頂きました。しかしサントリーの100円の缶のウーロン茶と全く区別がつかないのです。「美味しいですね」と儀礼上言いましたが、これがそんなに高価で貴重なお茶なのかと思いました。
そんな私でも、日本茶の場合はいいお茶かそうでないかくらいはすぐに分ります。小さい時から日常的に飲み続けて来たからでしょう。コーヒーや中国茶も、子どもの頃から飲み慣れていれば、美味しいか不味いかくらいは分るのでしょうが、残念ながら私の場合、全く不調法のようです。

因みに、聖書にお茶やコーヒーは出て来るのでしょうか。聖書語句大辞典などで調べてみたところ、聖書に出て来る飲み物としては、水、乳(牛・羊・山羊)、そして葡萄酒が主で、後はせいぜい葡萄や柘榴などの果物を絞った甘い飲み物(つまりフルーツ・ジュースですね)しか出て来ません。中国原産のお茶や、エチオピア原産のコーヒーの類は、アブラハムやモーセも、そしてイエスやパウロも飲むことは未だなかったようです。
                                                                 (戒能信生)

2016年1月17日日曜日

2016年1月24日 午前10時30分
降誕節第5主日礼拝No.42
     司式 野口 倢司
    奏  黙 想       奏楽 釜坂由理子
招  詞  詩編98・1、3(93-1-18
讃 美 歌  4 
主の祈り  (93-5A) 
交読詩篇  詩編44・1~27
讃 美 歌  280
聖書朗読  コロサイ書1・15-20
祈  祷
讃 美 歌  281
使徒信条  (93-4-1A)

説  教  「御子イエス・キリスト」
戒能 信生牧師
祈  祷
讃 美 歌  360
献  金            石井 房恵
報  告
頌  栄  84(二度繰り返して)
派遣・祝福
後  奏         
 
【本日の集会】
教会学校 お話し・橋本悠久子、奏楽・戒能直子

礼拝後、お茶の会

2016年1月15日金曜日

牧師の日記から(41「(続)最近読んだ本から
對馬達雄『ヒトラーに抵抗した人々―反ナチ抵抗市民の勇気とは何か』(中公新書)第三帝国下のドイツで、民衆に圧倒的に支持されていた総統ヒトラーとナチス政権に対して命をかけて抵抗し、またユダヤ人たちの救援のために活動した市民たちの姿が紹介されています。その中には、ボンヘッファーを初めとする告白教会関係者も含まれますが、普通の市民たちの活動もあったことに改めて感銘を受けました。戦時下の日本において、同様の抵抗運動がほとんど見られなかったのは何故かという重い課題を突き付けられます。
小森陽一・成田龍一・本田由紀『岩波新書で「戦後」をよむ』(岩波新書)戦後70年の歩みを、10年ごとに三冊ずつの岩波新書を通して振り返るという企画本で、専門も世代も異なる三人の研究者たちが、それぞれの問題意識や関心から鼎談しています。読んでいない新書がいくつも取り上げられており、こういう仕方での戦後史の読み解きもあることを教えられました。特に直近の10年では、湯浅誠『反貧困』、師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』、内橋克人『大震災の中で』の三冊が取り上げられており、現在の時代の課題がもろに提示されていることに改めて考えさせられました。
柄谷行人『世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)著者は、文芸批評、哲学、建築評論など多彩な貌をもつ思想家ですが、特に近年、『世界史の構造』を初め国家をどのように乗り越えるかという壮大で難解な議論を展開しています。この新書はその柄谷理論を比較的分かりやすく紹介しています。ソ連の崩壊後、思想界ではマルクシズムについて論究されることが少なくなり、大きな視点から世界を読み解こうとする思想家がいなくなりました。そんな中で、マルクスを批判しつつ、その問題意識をさらに展開しようと孤軍奮闘しているのは柄谷さんだけのようです。
橋爪大三郎・佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書)橋爪さんは社会学者でルーテル教会の信徒、佐藤さんは同志社の神学部を出て外交官になり、「外務省のラスプーチン」と呼ばれた異色の作家です。宗教を理解しないでは世界の外交も政治も分らないという観点からの対談集です。それにしては議論が反射神経的に交わされていて、厳密さに欠ける印象があります。キリスト教側の応答者として佐藤さんしかいないというところに、現在のキリスト教界の問題がありそうです。

常盤新平他『作家の珈琲』(コロナ・ブックス)常盤陽子さんから頂いた本です。25人の作家や芸術家たちのコーヒーについての随筆を集めたもので、作家たちが通った喫茶店の懐かしい写真も掲載されています。私も若い時からの習慣で、今でも週に何度か喫茶店に行って本を読みながらコーヒーを飲みます。曙橋駅の近くにある小さな喫茶店がお気に入りです。(戒能信生)

2016年1月10日日曜日

2016年1月17日 午前10時30分
降誕節第4主日礼拝No.41
     司式 茨木 啓子
    奏  黙 想       奏楽 内山 央絵
招  詞  詩編98・1、3(93-1-18
讃 美 歌  4 
主の祈り  (93-5A) 
交読詩篇  詩編43・1~5
讃 美 歌  275
聖書朗読  コロサイ書1・9-14
祈  祷
讃 美 歌  532
使徒信条  (93-4-1A)

説  教  「闇の支配からの救い」
戒能 信生牧師
祈  祷
讃 美 歌  449
献  金            萩原 好子
報  告
頌  栄  84(二度繰り返して)
派遣・祝福
後  奏         
 
【本日の集会】
教会学校 お話し・戒能牧師、奏楽・内山央絵
礼拝後、お茶の会

オリーブの会「点字の話し」戒能直子

2016年1月9日土曜日

牧師の日記から(40「(続)最近読んだ本から
武井弘一『江戸日本の転換点 水田の激増は何をもたらしたか』(NHKブックス)加賀藩の農政史を軸に、江戸期の水田開発の歴史を概観した入門書。当時の篤農家が残した農書や絵画を手掛かりに、水稲耕作の実態と新田開発の実情を描き出しています。新規開拓によって江戸期の人口は飛躍的に増加しますが、その内部矛盾に鋭く迫る意欲作です。持続可能なエコ社会と思われてきた米作中心の生活が、江戸末期には様々な点で限界に達しており、その難問は現在の農政の課題として続いていることを実証的に紹介しています。
森本あんり『反知性主義 アメリカが産んだ「熱病」の正体』(新潮選書)著者はICUの副学長で旧知の神学研究者です。この国ではキリスト教史というとヨーロッパを中心に取り上げられ、アメリカ・キリスト教史はほとんど顧みられません。しかし日本の教会に決定的な影響を与えたのはアメリカの教会です。本書は、アメリカ・キリスト教史としても、またアメリカ思想史としてもきわめて優れた内容をもっています。特に「反知性主義」が、まさにアメリカのキリスト教の特質から生まれた経緯を、大衆伝道者たちの姿を通して興味深く紹介しています。
加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書)文芸評論家としても知られる著者は、これまでも『アメリカの影』『敗戦後論』などによって、この国の戦後史解釈に常に挑戦的な議論を投げかけて来ました。私はこの著者が書いたものにほとんど目を通して来た愛読者の一人ですが、しかし本書には強い違和を感じました。それは、第二次世界大戦についての理解が、あまりにも異なるからです。連合国と枢軸国のいずれにも大義はなかったという議論はあり得るとしても、ドイツのナチス政権や戦前のこの国の天皇制絶対主義・軍事独裁政権を容認するような観点からは、やはり未来への建設的な議論は生まれないと思います。新書としては異例の600頁を越える力作で、教えられるところも多かったのですが、最近目立ってきた新自由主義論者の論調とどうしても重なってしまいます。

あずまきよひこ『よつばと!13』(電撃コミックス)これは、5歳の女の子を主人公とするマンガです。羊子に勧められて愛読書の一つになりました。もう13巻目ですが、「よつば」という名前の幼児の眼にこの世界がどのように見えているかが見事に描かれます。子どもの無垢をこれほど生き生きと印象的に描くことは、文章では困難で、そこにマンガの新しい可能性があると思わされました。私は不眠症気味で就寝する際に何かを読みながらでないと寝られません。しかし小説などを読み始めると、かえって目が冴えて眠られなくなることがあります。そういう時は『よつばと!』の出番です。ですから枕元にはこの漫画が全巻並んでいるのです。(この項続く 戒能信生)

2016年1月3日日曜日

2016年1月10日 午前10時30分
降誕節第3主日礼拝No.40
     司式 橋本  茂
    奏  黙 想       奏楽 釜坂由理子
招  詞  詩編98・1、3(93-1-18
讃 美 歌  4 
主の祈り  (93-5A) 
交読詩篇  詩編42・1~12
讃 美 歌  279
聖書朗読  コロサイ書1・1-8
祈  祷
讃 美 歌  451
使徒信条  (93-4-1A)

説  教  「希望の福音」
戒能 信生牧師
祈  祷
讃 美 歌  497
献  金            野口 洋子
      対外献金・シリア難民のために
報  告
頌  栄  84(二度繰り返して)
派遣・祝福
後  奏         
 
【本日の集会】
教会学校 お話し・野口洋子、奏楽・戒能直子
礼拝後、お茶の会
定例長老会


本日の対外献金は、シリア難民支援のために、NCCを通してWCCACTプロジェクトに送られます。

2016年1月2日土曜日

牧師の日記から(39「最近読んだ本から
年末の1226日、千代田教会を会場に柏木義円研究会が行われました。親しい研究者たちが何人も参加してくれたので、書庫兼書斎に案内したところ、みんなから散々羨ましがられました。友人たちは、そろそろ大学を停年で退職しなければならない年齢で、みんな研究室の書籍の置き場所に困っているからです。そんなこともあって、最近読んだ本から、新書や文庫を中心に何冊か紹介しましょう。
小熊英二『生きて帰って来た男 ある日本兵の戦争と戦後』(岩波新書)月刊誌『世界』に連載していた時から毎回愛読していました。著者の父親の戦争体験・シベリア抑留と帰国後の生活者としての歩みを詳細に聞き書きしたものです。その特徴の一つは、戦争体験と戦後の歩みが接続されていることです。この二つはしばしば切り離して捉えられがちですが、その両者が繋ぎ合さられた時、そこに何が見えてくるかが本書の読みどころです。この本は小林秀雄賞を受賞しています。
高橋源一郎×SEALDs『民主主義ってなんだ』(河出書房新社)この夏、安保法制に反対する国会前での運動を担ったSEALDsの若者たちの想いを作家の高橋源一郎が聞き出しています。従来の政党や労働組合などの動員主義ではなく、現在の若者たちの関心や問題意識が率直に披瀝されています。SEALDsの中心にいる奥田愛基君は、旧知のバプテスト連盟の藤田英彦牧師の孫で、福岡でホームレス支援を続けている奥田知志牧師の息子であることもあって、とても興味深く読みました。
吉村昭『昭和の戦争Ⅲ秘められた史実へ』(新潮社)羊子からのクリスマスプレゼントです。私は吉村昭の史伝ものが好きでほとんど目を通していますが、これには読み逃している作品が何篇か含まれています。以前、岩波新書の『シリーズ日本近現代史』で、気鋭の若い研究者たちが、何人も吉村昭のドキュメンテーションを参考文献に挙げていました。吉村さんの史伝ものは歴史研究者が取り上げるほど信頼されているのです。
アーシュラ・K・ル・グィン『世界の誕生日』(ハヤカワ文庫)著者は『ゲド戦記』などのファンタジー作品で有名ですが、もともとはSF作家です。本書には1990年代に書かれたSF作品が収録されていますが、いずれもジェンダーが隠れたテーマになっています。つまり両性具有等の異世界を描くことを通して、私たちのジェンダー理解の常識を問うているのです。

磯田道史『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)著者は日本近世史研究者で、朝日新聞の日曜版に連載したものが元になっています。各地に残る中世・近世の文書資料から、地震や津波などの災害の記録を読み解き、現代の防災のために役立てようという意欲作です。(この項続く 戒能信生)