2016年2月21日日曜日

牧師の日記から(46「枠を超えて<苦労>をわかちあう」
2月19日(金)、王子教会で開かれた北支区東京教区問題委員会主催の「これからの宣教を考える集会」に参加しました。以下はその報告と感想です。
講師は、池袋でホームレス支援活動をしている向谷地宣明さんという若者です。北海道浦河で精神障害者のグループホーム「浦河べテルの家」を運営している向谷地生良さんの息子で、池袋をベースにNGO活動「べてぶくろ」を立ち上げて活動していることは聞いていました。
ちょっと遅れて会場に着くと、もう講演が始まっていました。ところが話しているのは、父親の向谷地生良さんです。たまたま東京に来ていたので、息子の前座を務めているわけです。生良さんとは、三年前北海教区の教師研修会でお会いしています。ずっと以前直子さんが「べテルの家」支援のために昆布製品を扱っていましたし、向谷地さんの本も何冊か読んでいましたが、直接お会いするのはその時が初めてでした。「べテルの家」は、1984年、元浦河赤十字病院のソーシャルワーカーだった向谷地さんが無牧の元浦川教会の古い会堂に住み込み、退院した統合失調症の患者さんたちと家族ぐるみで一緒に生活することから始まりました。当時は、精神障害者と生活を共にするのはふさわしくないと考えられていた時代だったそうです。息子の宣明さんは、その中で産まれ、障害者たちと一緒に暮らす中で育ったわけです。
生良さんが、「浦河べテルの家」の歩みを紹介した後、宣明さんの話が始まりました。大学生として東京で生活するうちに、池袋でのホームレス支援活動と出会ったこと、路上生活をしている人々の中に、かなりの比率で統合失調症の人々がいることに気がついたこと、家庭にも居場所がなく、押し出されるようにして路上生活をしている人々と接するうちに、「べテルの家」の当事者研究の方法を取り入れられないかと考え、「ベテブクロ」の活動につながったことなどを淡々と紹介してくれました。その集会には、元・路上生活者たちが何人も参加していました。私はこれまで、精神障害とホームレスとを結びつけて考えたことがなかったので、ハッとさせられました。

もう一つ、北海教区の教師研修会での経験を想い出しました。そこには、心の病で休職している牧師が何人か参加していました。私はこれまでほとんどの教区の教師研修会に講師として呼ばれていますが、そんな経験は初めてでした。休職している牧師たちが教師研修会に出席して、一緒に楽しく話し合っているのは素晴らしい光景でした。そうか、あれは「べテルの家」の影響だったのだと気がついたのです。「べテルの家」の人々が出席している元浦川教会には、北海教区の牧師たちが入れ替わり立ち代わり説教応援などで協力しています。べテルの家の当事者研究の方法が、ごく自然に北海教区のある雰囲気を形成しているのだと改めて気づかされたのでした。(戒能信生)

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