2025年11月15日土曜日

 

牧師の日記から(540)「最近読んだ本の紹介」

 全国同信会編『天上の友 第5編』(キリスト新聞社)会衆主義を標榜する教会組織である全国同信会(分かりやすく言えば同志社出身の牧師たちの集まり)は、逝去した牧師たちの追悼記を『天上の友』として大正期から継続して刊行している。本書はその第5編で、2012年から2024年の時期に亡くなった約130名の牧師たちが取り上げられている。今回の編集責任者・上林順一郎先生から送られてきたので一読。11頁に紹介された牧師たちの面影と生涯を偲んでしばし感慨にふける。この企画の優れた点は、無名の牧師であっても、どんなに高名な神学者や大教会の牧師であっても全く区別することなく、等しく600字前後にその生涯が凝縮されていること。執筆者の名前は省かれているが、中には痛烈な皮肉や、愛情を込めた批判が書き込まれており、誰が書いたのかを推測する楽しみもある。

 マシュー・D・ハケネス『マルティン・ニーメラー』(新教出版社)第二次大戦下において、ヒトラーを公然と批判したニーメラー牧師の評伝。牧師の家庭に生まれ、根っからのナショナリストとして第1次大戦にUボート(潜水艦)の艦長として活躍した英雄が、戦後、神学校に進み牧師になる。元は民族主義者だった彼が、ヒトラーの教会政策を激しく批判して逮捕され、裁判では無罪になったものの「ヒトラーの囚人」として敗戦まで収容所に捕らえられていた。奇跡的に生き延びたたこの人の存在なくして、戦後のドイツ福音主義教会(DEK)再出発の原点になった「シュトットガルト罪責告白」は成立しなかった。ヒトラーに命を懸けて抵抗したニーメラーその人が自らの罪責を表明したことが、戦後のドイツ社会全体に一定の説得力をもったとされる。そのニーメラーが残したのが次の有名な言葉。

「はじめに彼らは共産党員に向かっていったが、私は声を上げなかった、共産党員ではなかったから/次に彼らは労働組合員に向かっていったが、私は声を上げなかった、労働組合員ではなかったから/それから彼らはユダヤ人に向かっていったが、私は声を上げなかった、ユダヤ人ではなかったから/そして彼らが私に向かって来たとき、私のために声を上げてくれる人は一人も残っていなかった」(戒能信生)

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