2018年9月15日土曜日


牧師の日記から(179

99日(日)主日礼拝。この日からⅡペトロ書の講解説教を始める。新約諸文書の中でも最も遅い時期、2世紀の半ばに成立したとされるペトロの名による手紙。ローマで殉教したとされるペトロの遺言という設定となっているが、参考書も少なく、説教集などもほとんどない。勿論私にとっても初めての経験。しかしこの当時の教会の様子や信仰理解を伝える貴重な資料ではある。礼拝後は婦人会主催の聖書を読む会で、創世記24章のイサクの嫁取りの箇所を、荒井久美子さんの発題で取り上げる。現代のユダヤ教正統派の若者たちの結婚観を伝えるNHKBS放送を、荒井さんご夫妻が再現してくれて興味深かった。午後、思い立って直子さんと上野の美術館に行く。最初は国立西洋美術館の「ミケランジェロと理想の身体」展。ミケランジェロの「ダビデ・アポロ像」が目玉だが、紀元前23世紀のギリシア彫刻と、ルネッサンス期のイタリア彫刻の比較が面白かった。既に紀元前に完成していた身体像が15世紀に再発見されるまで、長い空白があったのは何故なのか考えさせられた。おそらくキリスト教の身体理解の影響があったのだろう。続いて東京都美術館で「藤田嗣治展」を観る。よくこれだけ集めたと思えるほど(126点)藤田嗣治の作品がその初期から晩年に至るまで展観されている。しかしやはり有名な戦争画「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」が異彩を放っていた。

10日(月)北海道の地震の被害はかなり深刻そうだ。近畿地方の台風の被害も、まだまだその影響が残っている。夜は日本聖書神学校の後期の授業の初日。今期の受講生は少ないので、じっくり資料を取り上げることが出来る。図書館で由木康の著作を捜して借り出す。11月の講義の準備のため。

11日(火)夜は山口里子さんの聖書ゼミに参加。マルコ福音書129以下のペトロの義母の癒やしについて、これは本来彼女の召命の記事ではなかったかと指摘される。確かにdiakoneo(仕える)というギリシア語が女性の場合には「もてなす」と訳されている。そこに女性を弟子から排除した事情が伺える。

12日(水)久しぶりの聖書を学ぶ会で、サムエル記上4章以下を取り上げる。圧倒的に優勢なペリシテ族との戦闘に破れ「契約の箱」が奪われるという故事。その返還にまつわる伝承から、古代の宗教的慣習が推測できる。

13日(木)午前中、NCAの事務仕事。午後から連続講座「日本キリスト教史を読む」で、金井為一郎を取り上げる。金井先生のお身内の方々も出席されて恐縮した。その後、宗教新聞『中外日報』の取材を受ける。週報のブログを見て、いろいろ本を読んでいるようだからというので、「この一冊」というコラムで取り上げるという。井上良雄先生の『キリスト教講話集』を紹介する。

14日(金)午前中、『時の徴』の封筒の印刷のために早稲田教会へ。来週の戦争を許さないキリスト者の会の講演「戦時下の教会」の準備に手を付ける。なんだか急に忙しくなってきて、身体がついて行かない感じ。(戒能信生)

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