2023年11月26日日曜日

 

牧師の日記から(445)「最近読んだ本の紹介」

黒柳徹子『続・窓ぎわのトットちゃん』(講談社)国民的ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』の続編。トモエ学園を卒業して以降の戦時下の疎開生活や、敗戦後の上京、そしてNHK専属テレビ女優としての活躍が綴られる。他の著書で読んだことのあるエピソードも多いが、改めてこの稀有な女優の人柄と、芸能界を生き抜いた軌跡に驚嘆する。ただ当然のことながら、前著のような幼い子どもの視点から描かれた独特のファンタジーの要素は失われている。でも楽しく読めた。

斎藤貴男『カルト資本主義』(ちくま文庫)1980年代から90年代の超能力研究やオカルト・ビジネスの興隆を紹介する。世界救世教の万能微生物EMや、ヤマギシ会の現状、アムウェイ商法などの実態が暴かれている。旧統一協会の問題が多額の献金や宗教Ⅱ世の問題とからめて議論されているが、現在の社会にこのような一種のオカルティズムやカルト商法が蔓延するのは何故かが問われる。キリスト教も含めて既成の宗教が生命力を失っている事実が、このような事態が生んでいるとも言える。

間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書)ガンディーの非暴力思想がどのように生み出されたかを、批判的研究も参照にしながら辿っている。生まれ育った家庭、早期の結婚、イギリス留学、南アフリカでの弁護士としての活動、そしてインドに帰国してイギリスからの独立運動に関わっていく経緯が、特にガンディー自身の宗教的思想的探求と共に紹介される。独立を果した後、ヒンドゥー教徒とムスリムとの激烈な宗教対立に対して宥和と非暴力を訴えたガンディーは、一方で「まだ自分自身の解脱を考えていた」という指摘は考えさせられた。実際に家族、特に妻にはどう映っていたか、また反逆した長男からはどう見えていたのかという視点が突きつけられる。偉大な宗教思想家の究極的な獨我主義は家族にとっては「ほとんど暴力的に見える」と著者は指摘する。

アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』(ハヤカワ文庫)ミステリーの女王と言われるアガ・サクリスティーのクリスマスに関する短編集。ミステリーではなく、ファンタジー風の短編と詩を組み合わせたオムニバス。読書会「キリスト教と文学」の課題図書として読んだ。クリスティーの信仰理解や宗教観の一端が窺われる。彼女自身は英国国教会の信徒だったが、小説に登場する「灰色の脳細胞」のエルキュール・ポワロはカトリック信者として描かれている。

久米宏『久米宏です』(朝日文庫)1985年から2003年までニュースステーションのキャスターとして活躍した著者の一種の自伝。歌謡番組を変えたと言われる「ベスト・テン」や、報道番組を一新した「ニュース・ステーション」の内幕が紹介されて興味深い。私自身がこの時期この番組を観ていたので、自分があの時代(バブル経済と自民党政権の崩壊)に何を考えていたのかを振り返させられた。(戒能信生)

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