2025年11月8日土曜日

 

牧師の日記から(539)「最近読んだ本の紹介」

 野村真理『ホロコースト後のユダヤ人 約束の土地は何処か』(ちくま学芸文庫)パレスチナ問題と現在進行中のガザの惨劇の遠い背景として、ナチスによるユダヤ人迫害とイスラエル建国(1948)との関連を究明する歴史研究。ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちは、解放後行き場を失う。彼ら彼女たちは、いわゆる難民(Refugee)とは異なり、帰る場所も行く当てもない存在として「ユダヤ人DP」(Displace Persons)と呼ばれる。問題は、この人々の移住先としてアメリカを初め多くの国が必ずしも積極的に受け入れなかったこと。結果としてその多くが、シオニストたちの呼びかけでイスラエルに移住することになる。先住民たるパレスチナ人たちの住む土地に無理やり割り込む形で。したがって現在のパレスチナ問題の根本的な責任は、ホロコーストをようやく生き延びた人々を受け容れなかった世界にあるというのが著者の主要な論点。学術書なので読みにくいところもあるが、初めて知ることも多く考えさせられた。

谷川俊太郎+和田誠『ナンセンス・カタログ』(ちくま文庫)この本をどう紹介したらいいだろうか。詩人の谷川俊太郎が、ある言葉を選んで(例えば「ラジオ」とか「切株」、「マッチ」という具合に順不同、一切の脈絡なしに)、それについてのショート・エッセイを書き、それに和田誠がイラストをつけている。なんということもない内容なのだが、寝床で読むのに最適。繰り返し読んでいるが、34篇目を通すと眠くなるという仕掛けになっているのが不思議。寝る前に再読すると、睡眠導入剤の代わりになる。不眠症気味の人は一度試してみる価値あり!

仁藤敦史『加耶/任那』(中公新書)日本史の教科書で「任那の日本府」の存在を教えられた。しかし学生時代に在日の友人から、韓国では任那日本府は存在しないと教えていると聞いて驚いたことがある。すなわち日本と韓国の教科書が、古代朝鮮に倭の拠点があったかどうかでも正反対の記述をしていることになる。それは現在でも両国の歴史研究の対立点でもあるという。本書は、古代朝鮮史の研究者がこの難問に分け入って、現時点での学術的な見解を、公平に、言わば両論併記の形で紹介している。共通教科書もなかなか難しいようだ。(戒能信生)

2025年11月2日日曜日

 

2025年11月9日 午前10時30分

聖霊降臨節第23(No.28)

                司式 戒能 信生

黙  想         奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-

讃 美 歌  24

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  34・1-22

讃 美 歌  127

聖書朗読  フィリピ書⒉・19-30

祈  祷

讃 美 歌  543

説  教  「友と、主にあって」

               大森 意索伝道師

讃 美 歌  419

使徒信条 (9341A

献  金

報  告  

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(9:30)お話し・戒能牧師、奏楽・

 内山央絵、(柿もぎ)

・礼拝後、「私の愛唱聖句」梅本順子(お茶の会)

・会堂の後ろに飲み物が用意されています。水分補給に利用ください。

2025年11月1日土曜日

 子育て相談カフェ通信⑥(大森意索)

 はや10月になりました。今年も残すところ2ヶ月ちょっとで、アドベントやクリスマスの季節が近づいています。

さて、前々回、前回と岡山の教会の話をしましたが、さらに続きを書くことにしました。御津キリスト教会は73年前に設立され、かつては付属の百合の花幼稚園がありましたが、町立保育園ができたこともあり廃園となりました。けれど、今でもかつて幼稚園に来ていた大人たちが教会に時折顔を出してくれることがあり、幼稚園の役割を改めて感じることもあります。私自身も、末っ子であったこともあり、小学生の時も幼稚園の子どもたちと遊ぶ機会が多かったことが、仕事でもずっと子どもに関わるきっかけだったのかもしれません。

さて、この10月で姉が召天して4年になります。姉は癌の闘病が20年近く、ずっと闘病しながら教会の牧会を継続していました。岡山だけでなく、埼玉医大や聖路加病院で治療を継続していたこともあり、そのつど病院について行く、そんな役を私はしていました。患者や患者家族という側が予想以上に大変なことも経験しました。ある病院では、もうこれ以上の治療はありませんと言われ、そのことはしかたがないのですが、紹介先も示されず、後はご家族で考えてくださいと言われたのにはとても困りました。私の中では普通は他の施設に紹介してもらうのが当たり前と思っていたので、驚くやら呆れるやらでした。せめて、紹介状やいくつか候補をあげて欲しいとお願いしてやっと紹介してもらいましたが、病院によって対応がずいぶん違うのだと思わされました。結局最終的に岡山の病院で治療を継続しましたが、ちょうど4年前はコロナ禍で病院の面会制限も強く、遠くからの家族であっても1時間しか許可してもらえなかったりで、いろいろ交渉したりもしました。そして、面会制限の問題があったため、無理をして退院することにしたのでしたが、最後の1週間を家で過ごせたことは姉にとっても、また家族や教会員にとってもとても良かったと思いました。姉は最後まで、教会をどうするか具体的には何もいってくれませんでした。このため下の姉とともに何回か岡山に通うことにしたのでした。こうして私は、月1回岡山に行くことになったのです。

2025年10月26日日曜日

 

2025年11月2日 午前10時30分

聖霊降臨節第22主日・永眠者記念礼拝(No.27)

                司式 釜坂由理子

黙  想         奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  24

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  33・1-12

讃 美 歌  463

聖書朗読  創世記36・1-22

祈  祷

讃 美 歌  496

説  教  「ベニヤミン(私の幸いの子)」

                 戒能信生牧師

讃 美 歌  385

使徒信条 (9341A

献  金              萩原 好子

報  告  

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・礼拝後、「信仰の先達を偲んで」(お茶の会)

・持ち寄りランチ(於・ホール)

・定例長老会

・礼拝堂の後ろに飲み物が用意されています。ご利用ください。

2025年10月25日土曜日

 

牧師の日記から(538)「最近読んだ本の紹介」

 トム・フィリップス『大失敗の世界史』(河出文庫)著者はイギリスのジャーナリストで、痛烈な皮肉とユーモアを交えて世界史の数々の失敗例を紹介する。面白がって読んでいくうちに、ヒトラーについての言及の部分が気になった。ヴァイマル時代末期、政党が多党化し、どの政党も多数を取れずに政局が混乱する。ナチスに人気が集まり、比較第一党になる。前首相のパーペンは、粗野で政治のド素人のヒトラーを頭からバカにし、意のままに操れるとタカをくくって連立内閣を組み、ヒトラーを首相に、自らは副首相に就任する。危惧する仲間にパーペンは、「二か月もすれば、あの素人は政界の片隅に追いやられているだろう」と豪語していた。しかし実際には二か月後、パーペンは政界を追われ、ヒトラーは全権委任法によってすべての権力を握ってしまった。そこからヒトラーの暴走が始まった。トランプ政権の迷走や日本の政局の混迷を見るにつけ、なんだか恐ろしくなってきた。知識人たちが馬鹿にしてきた政治家が、いつの間にか絶対権力を握りかけているのだ。著者はこう指摘している。「間抜けな男が手前勝手な裁量で政権を支離滅裂に振り回し、自分ならこの間抜けを手のひらで転がせると侮った自信過剰の側近たちが、破局に至る道を助けたのだ。」

 鶴見俊輔・網野善彦『歴史の話』(朝日新聞社)「網野史学」で知られる歴史家と市井の哲学者の初めての対談集。日本の歴史について縦横無尽に語られていて興味津々。その中で山中共古について短く触れられている。先日、野口洋子さんから、ボランティアをしている新宿歴史博物館の展示で、この近くで生まれた山中共古という牧師が紹介されていたが知っているかと尋ねられて驚いた。山中共古(後に「山中笑」と改名)は、幕末期に、教会のすぐ近くの西念寺(私の散歩コース)に、幕臣の次男として出生。14歳の時、皇女和宮の近侍として登用され、明治維新と共に駿府へ移住。そこでメソジストの宣教師の感化を受けて21歳で受洗、東洋英和学校(後の青山学院)を卒業してメソヂスト教会の最初期の牧師になる。長く山梨県下で牧会する傍ら、民俗学の研究で知られる。キリスト教界でよりも、この国の民俗学のパイオニアとして有名なのだ。(戒能信生)

2025年10月19日日曜日

2025年10月26日 午前10時30分

聖霊降臨節第21主日礼拝(No.26)

                司式 石井 房恵

黙  想         奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-10

讃 美 歌  16

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  32・1-11

讃 美 歌  361

聖書朗読  マルコ福音書1・16-20

祈  祷

讃 美 歌  369

説  教  「漁師たちへの呼びかけ」

                 戒能信生牧師

讃 美 歌  404

使徒信条 (9341A

献  金              津金 寿子

報  告  

頌  栄  84(二度繰り返す)

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(合同礼拝に合流)

・礼拝後 バザー会場づくり

・昼食 ホールで各自昼食をお取りください。

12:30 バザー開店

13:00 オルゴール演奏(岡﨑祐一)

14:00 バザー閉店、かたづけ作業

・翌週の永眠者記念礼拝会場設営

・らふぁえる練習

・礼拝堂の後ろに飲み物が用意されています。 

 

牧師の日記から(537)「最近読んだ本の紹介」

 池田澄子・福島申二「対談『戦争が廊下の奥に立つ』時代の俳句のこと」『世界』10月号(岩波書店) 私は俳句には全くたしなみがない。しかし戦前・戦中の時代、俳人や川柳作家たちが治安維持法に問われて逮捕されたと聞いている。歌人たちにそのような例はほとんどなかったそうだ。なぜ俳人だけが弾圧されたのか興味があった。池田さんは『世界』の「岩波俳句」の選者、福島さんは朝日新聞の「天声人語」を長く担当し、しばしば俳句を取り上げたことで知られる。

「戦争が廊下の奥に立ってゐる」渡邊白泉

平易な言葉で、戦争が日々の暮らしのすぐ傍らに入り込んできている事実を鋭く描き出している。「銃後俳句」の一句。

「夏の海水兵ひとり紛失す」渡邊白泉

人が部品か工具のように扱われる異様と非情を万の言葉にもまして浮かび上がらせます。(福島評)

 「出征ぞ子供等愛犬は歓べり」三橋敏雄

何も知らない子供や犬ははしゃいでいるが、本人や家族は喜んでいないことを鮮やかに切り取っている。「は」を「も」に換えると何の変哲もない句になる。(池田評)

 「手も足ももいだ丸太にしてかへし」鶴彬

 「屍のゐないニュース映画で勇ましい」鶴彬

 「銃剣で奪った美田の移民村」鶴彬

これは川柳で、川柳作家の方が先に弾圧された。鶴彬は昭和13年に獄死しています。言っていることがモロですからね。まるで捕まるのを覚悟している感じもある。(福島評)

 「戦死せり三十二枚の歯をそろへ」藤木清子

忘れられていた俳人を宇多喜代子さんが発掘された。切ない、忘れがたい句ですよね。戦死するのは健康な若い人。(池田評)

 「すかんぽや支那の子供はかなしかろ」高篤三

昭和13年の句。何げないのですが、前年の暮れには南京が陥落して日本中が提灯行列で湧きました。すかんぽの季語は春。日本が中国に敵愾心を燃やしていた時期の句なので、「子供はかなしかろ」が記憶に残っています。この人は東京大空襲で妻や子どもたちと一緒に亡くなっています。(福島評) (戒能信生)