2021年3月27日土曜日

 

牧師の日記から(311

321日(日)主日礼拝。神学生・西川穂さんの説教。ロマ書などの聖書箇所を次々に引用しながら、ご両親が受洗された経緯や、父上の海外出張先での急逝について証しされた。よく準備されたメッセージだった。礼拝後、婦人会の打ち合わせ。聖書を読む会をどうするか協議してもらった。

22日(月)午前中、門前仲町の歯科医で定期検診。午後は大久保の婦人矯風会館に出かけて、矢嶋楫子の資料を調べる。楫子は女子学院の初代院長を務め、婦人矯風会を創立して長くその会頭を担った明治・大正期の代表的な女性キリスト者。しかしその信仰理解については分からないことが多い。矯風会の初期の会報を調べて、楫子の文章がほとんどないことに気づく。楫子の名前で出てくるのは、挨拶や書簡、陳情や請願などがほとんどで、その信仰理解を示すものは少ない。どうやら楫子は文章の人ではなかったようだ。帰宅後、多磨霊園の教会墓地を管理してくれている石材店米内屋さんに連絡をし、故・松野俊一名誉牧師の墓碑への印刻を依頼する。

23日(火)午前中から錦糸町の賛育会病院の受診。前立腺癌の予後の検査と内科の定期検診。先日の胃カメラの検査の結果は良好とのこと。病院での待ち時間に、鶴見俊輔の『戦時期日本の精神史』を読む。以前目を通しているが、改めて再読して示唆されることが多い。午後帰宅して、3月末が締め切りのブックレット『スペイン風邪と日本の教会』の原稿に手をつける。100年前、スペイン風邪で国内だけで45万人もの人が亡くなったが、その追悼碑や慰霊碑の類がほとんどないという。戦争や災害による犠牲者の記念碑が全国各地にあるのに比べると、疫病による死者は忘れられるのだ。今回のコロナ禍による犠牲者も同じようになるのだろうか。

24日(水)午前中、四谷駅前の眼科医で定期検診。緑内障の進行は抑えられているとのこと。連日の病院通いで、つくづく病者の心理について考えさせられる。午後は上林順一郎牧師の聖書講座にZoomで参加。今期の最終回で、創造物語について学ぶ。松野ヤスコさんから電話があり、左脚の怪我で流山中央病院に入院したという。44日の納骨式のことが気になるが、怪我の程度や医師の判断を待たなければならない。ご親族の松野三郎さんと連絡をとり、善後策を協議する。

25日(木)一日書斎に籠もって、「スペイン風邪と日本の教会」の原稿書き。ようやく第一稿を仕上げて、直子さんに校正してもらう。

26日(金)「スペイン風邪と日本の教会」の原稿三本を送稿。来年度から始まる「同胞教会史研究」プロジェクトの企画資料を作成し、関係者にメールで送稿。次々に仕事が持ち込まれるのは幸いなことなのだろう。

27日(土)午前中、NCAの財務問題についての会議にZoomで参加。セミナーハウスの経営をコロナ禍が直撃し、職員の雇用や今後の運営について問題山積。道が開かれることを切に祈る。午後、須賀さん一家が会堂清掃に来てくれる。週報や月間予定表の作成など明日の準備。(戒能信生)

2021年3月21日日曜日

 

2021年3月28日 午前10時30分

受難節第6主日礼拝(No51

      司式 野口 倢司

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-31

讃 美 歌  2(13節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編125・1-5

讃 美 歌  297(12節)

聖書朗読  出エジプト記20・8-11

ルカ福音書6・1-11

祈  祷

讃 美 歌  369(14節)

説  教  「安息日論争」

               戒能信生牧師

讃 美 歌  390(1、2節)

使徒信条  (9341A

献  金             西川 穂

報  告

頌  栄  83(12節)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(春休み)

礼拝後、受難週全体祈祷会(司会・大森意索)

・入門の会「主の祈り②」戒能牧師

・臨時長老会(受洗者試問会)

・週報等発送作業

16:30 北支区社会委員会「コロナ禍と教会」(オンラインで開催)

 

2021年3月20日土曜日

 

牧師の日記から(310)「最近読んだ本の紹介」

森本あんり『不寛容論』(新潮選書)前著『反知性主義』で、トランプ現象の源流をアメリカ宗教史に探索した著者が、今度は「寛容論」について書いた。ヨーロッパからの宗教難民として新大陸に移住した人々が、お互いの信念や主張をぶつけ合いながら、幾多の失敗と挫折を経て共存する道を見出して行ったという。その経緯と議論を、ロジャー・ウィリアムという特異なピューリタンに焦点を合わせて紹介してくれる。母国イギリスで迫害されたピューリタンたちは、新大陸に理想の社会を建設しようとする。しかしそこには、異教徒の原住民がおり、さらにクェーカーやバプテストなどの宗教的少数者が次々に押し寄せる。自らの信教の自由を主張した人が、今度は別の宗教的少数者を排除する側に立つことになる。その矛盾と徹底して闘ったのがロジャー・ウィリアムだという。原理主義的な非寛容が主張され、さらにヘイト・スピーチまがいの言説が横行する現代社会の難題を、神学思想史から読み解こうとする意欲作。

小塩海平『花粉症と人類』(岩波新書)毎年、この季節になると直子さんが花粉症で苦しんでいる。しかし花粉は、植物の世界の驚くべき進化の成果だという。恐竜たちが地上を闊歩していた時代、裸子植物は花粉を風で飛ばして、はるか遠くまで繁殖できるようになった。今から約5万年前、ネアンデルタール人が埋葬された場所(イラクのシャニダール遺跡)に花束が添えられていた。その事実に、宗教学者は原始宗教の発生を見る。ところが植物生理学専攻の著者は、その花束の花粉にエフェドリンが含まれることから、ネアンデルタール人も花粉症ではなかったかと大胆に推理する。以下、人類の歴史と花粉症との関わりを概説し、花粉症と共存する道を提案する。聖書に花粉症への言及があるかとか、途中で何度も聖書について言及される。調べてみると、著者は東京告白教会の長老で、日本キリスト教会ヤスクニ問題委員会の代表だというので、俄然親しみが湧いた。

リチャード・ホートン『なぜ新型コロナを止められなかったのか』(青土社)著者はイギリスの権威ある医学雑誌『ランセット』の編集長で、熱帯医学の専門家。COVID-19のパンデミックについて、日本のマスコミで語られている理解とはかなり異なる見解を示してくれる。201912月、中国の武漢で最初の患者が発見されたとの情報は、いち早くWHOにもたらされ、その分析結果も公表されたという(各社のワクチンは、これを元に開発された)。これを受けてWHOは一ヶ月後の130日にPHEIK(緊急事態)宣言を発表した。これは2014年にエボラ出血熱の発生の際に8ヶ月を要したのと比べると、きわめて迅速な対応だった。ところがアメリカやイギリスなどの政治家たちが、この感染症の危険性を軽視して対応が遅れたため、先進国で感染症が爆発的に拡大した。すると政治家たちは自らの責任を回避するため、その責任を中国とWHOに押しつけようとして、その言説が世界中に蔓延したという。つくづく考えさせられた。(戒能信生)

2021年3月14日日曜日

 2021年3月21日 午前10時30分

受難節第5主日礼拝(No50

      司式 高岸 泰子

    奏  黙 想        奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-31

讃 美 歌  2(13節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編124・1-8

讃 美 歌  157(12節)

聖書朗読  詩編22・1-4

ローマ書3・21-36

祈  祷

讃 美 歌  377(14節)

説  教  「キリストの福音を信じるだけで救われる」     西川 穂神学生

讃 美 歌  218(14節)

使徒信条  (9341A

献  金             津金 久子

報  告

頌  栄  83(12節)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・齊藤織恵、奏楽・戒能直子

・礼拝後、婦人会総会(礼拝堂の講壇前にお集まりください。ごく短時間で打ち合わせをします)

お茶の会は、感染拡大を避けるためしばらく見合わせています。

・本日の礼拝ライブ配信担当・野口倢司

2021年3月13日土曜日

 

牧師の日記から(309

37日(日)この日から、休校にしていた教会学校を再開。二人の男の子が参加した。主日礼拝。ルカ福音書527-32の講解説教「徴税人レビの召命」。支配者であるローマ帝国のために働く徴税人レビにイエスの眼は注がれる。人々から嫌われ、宗教的に断罪される彼をイエスは招く。宗教的常識や政治的な枠組みを越えるイエスの宣教姿勢と言える。礼拝後、長老会。非常事態宣言が延長される中での礼拝の在り方について協議。気をつけて、礼拝だけは継続したい。またイースター礼拝と墓前礼拝(故・松野俊一名誉牧師納骨式)、教会総会の準備についても話し合った。

8日(月)寒い雨の一日。在宅で事務仕事。NCAの運営委員会の準備、ブックレット『スペイン風邪と日本の教会』の企画案、次年度の農村伝道神学校の集中講義「日本宗教史」のシラバス作成など。関田寛雄先生から週報等をお送りしたのに対する返書が届く。いつもながら牧師を牧会する関田先生のお便りに励まされる。

9日(火)午前11時から、Zoomで『スペイン風邪と日本の教会』の編集会議。新教出版社の小林望社長、富坂キリスト教センターの岡田仁主事と。こういう打ち合わせをリモートで出来るのは便利。でもそのために明らかに運動不足になっており、体力が落ちていることを痛感する。午後、日本聖書神学校をこの春卒業した西川良三・優子さん夫妻が訪ねてくれる。山梨の教会に赴任されるお二人のために祈る。

10日(水)午前中、日本聖書神学校の小川和孝さんが来て、書斎の私のPCにカメラとマイクを新しく設置してくれる。昨年4月、小川さんがリモート用のカメラを設置してくれて、この間、授業や会議、研究会などで多いに利用してきた。その音声に雑音が入るというので、そのバックアップのため。教会の印刷機の紙送りが不調なので、メインテナンスを依頼し調整してもらう。津金寿子さんが来られて、姉上の松尾智子さんが8日に亡くなったとのこと。93歳で大往生ではある。

11日(木)午前中、キリスト教会館のオウナー会議をZoomで。会館の冷暖房機の取り替えについて協議。なにしろ6,000万円余を要する大工事。午後からは、NCAの運営委員会をやはりZoomで。次年度の事業計画や予算について協議。新しい共同研究「コロナ後の教会の希望」も始まる。

12日(金)午後から富坂キリスト教センターで来年度から始まる「同胞教会史研究」の打ち合わせ。4時から「スペイン風邪と日本の教会」第二回研究会。南山大学の三好千春さんがカトリック教会の対応について報告をしてくれる。その他の研究員たちの報告。6月にこの研究会の報告書を新教出版社からブックレットの形で刊行することになり、その編集の相談。

13日(土)午前中、聖書と人間を考える会で石井摩耶子さんが東日本大震災から10年を振り返る発題。午後1時から故・眞嶋威記念礼拝にリモートで参加。週報や長老会報告の印刷をして明日の礼拝の準備(戒能信生)

2021年3月7日日曜日

 

2021年3月14日 午前10時30分

受難節第4主日礼拝(No49

      司式 常盤 陽子

    奏  黙 想        奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-31

讃 美 歌  2(12節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編123・1-4

讃 美 歌  360(12節)

聖書朗読  出エジプト記243-11

ルカ福音書5・33-39

祈  祷

讃 美 歌  309(1、2節)

説  教  「断食問答」

     戒能 信生牧師

讃 美 歌  289(1、2節)

使徒信条  (9341A

献  金             高岸 泰子

報  告

頌  栄  83

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・野口洋子、奏楽・内山央絵

礼拝後、聖書を読む会「ダビデの妻アビガイル」(サムエル記上25章)発題・橋本悠久子

・お茶の会は、感染拡大を避けるためしばらく見合わせています。

・本日の礼拝ライブ配信担当 大森意索

2021年3月6日土曜日

 

牧師の日記から(309)「最近読んだ本の紹介」

ルシオ・デ・ソウザ・岡美穂子『大航海時代の日本人奴隷』(中央公論新社)戦国時代から江戸初期にかけて、フィリピンやマカオに日本人傭兵がいたことは知っていた。しかしメキシコやポルトガルなどの当時の史料に日本人奴隷についての言及が多数見られることを初めて教えられた。その史料というのが、異端審問記録というのだから驚く。当時ポルトガルでは、キリスト教に改宗したユダヤ人に対する迫害があり、それを逃れてユダヤ商人たちが遠くインドやマカオ、日本、さらにメキシコにまで逃げて来ていたという。しかしユダヤ人追及の手はアジアにまで及び、やがてついにメキシコで捕縛されて審問にかけられる。その裁判で、日本人奴隷の証言が決め手になったというのだ。ポルトガル本国では公式には日本人奴隷は禁じられていたのだが、実際にはかなりの数の日本人奴隷たちが各地に存在したらしい。興味深いのは奴隷制度を正当化する理屈で、異端との戦争(聖戦)で捕虜にした者は、奴隷にすることが認められていたという。アフリカからの奴隷売買で莫大な利益を上げたポルトガルでは、当然のようにアジア人を奴隷として使用していたのだ。あの時代、数奇な運命によってアジアの各地や南アメリカ、さらにヨーロッパにまで渡って働いていた日本人奴隷がいたという事実に、改めて考えさせられた。

室井康成『時大主義 日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」』(中公新書)古い資料などを読んでいて、時折「時大主義」という言葉にぶつかる。「大に事(つか)える」という漢文に由来し、「強者に追随して保身を図る」という意味で、明治初期に福澤諭吉が用いていてから一般に広まったという。著者は民俗学が専攻で、柳田国男が日本人の特徴として「事大主義と島国根性」を挙げたことをきっかけに、日本の近現代史において「事大主義」という言葉がどのように用いられてきたかを綿密に追っている。初めに、朝鮮民族に対する否定的な言説として用いられたこの言葉が、やがて沖縄差別の文脈で用いられ、さらに日本人そのものの民族性、欠点として理解されるようになったという。この頃官僚の世界で流行りの「忖度」「長いものに巻かれろ」という心情も、この「事大主義」と言える。

近藤健児『絶版新書交響楽』(青弓社)著者は経済学者だが、絶版になっている新書や文庫を収集する稀代の読書家のようだ。本書で紹介されている100冊近い外国小説の中で、私が読んだものは一つもなかった。世には無類の読書家がいるものだとホトホト感心させられた。

ひるなま『末期ガンでも元気です』(フレックスコミック)人に勧められて手にした。38歳の女性漫画家がステージ4の大腸がんに侵される。その発見から、検査、開腹摘出手術、放射線療法へと至る経過を独特のマンガで表現している。これほど深刻ではないものの、一応前立腺癌の摘出手術を受けた身としては、身につまされながら読まされた。患者の立場からの具体的な忠告やアドバイスが満載で参考になる。(戒能信生)