2021年5月30日日曜日

 

2021年6月6日 午前10時30分

聖霊降臨節第3主日礼拝(No10

      司式 鈴木志津恵

    奏  黙 想        奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-53

讃 美 歌  1(12節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編135・1-21

讃 美 歌  225(12節)

聖書朗読  エゼキエル書18・30-32

      ルカ福音書7・1-10

祈  祷

讃 美 歌  342(1,2節)

説  教  「百卒長の僕の癒し」

                戒能信生牧師

讃 美 歌  454(12節)

使徒信条  (9341A

献  金  対外献金「沖縄教区石垣農村伝道所会堂建築を覚えて」   石井寛治

報  告

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・戒能牧師、奏楽・内山央絵

・ライブ配信担当・西川穂

・CS教師会

・定例長老会

・お茶の会は感染症拡大を避けるため差し控えています。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

2021年5月29日土曜日

 牧師の日記から(319)「最近読んだ本の紹介」

加藤典洋『9条の戦後史』(ちくま新書)昨年亡くなった著者の遺稿で、編集者による死後出版。前著『9条入門』の続編で、憲法第9条の「平和条項」についてのほとんどすべての議論の推移と変遷を丹念に整理し、問題点を洗い出している。特徴的なのは、石橋湛山や森嶋通夫、都留重人など、従来の改憲論と護憲論において顧みられなかった人たちの提案や主張が丁寧に取り上げられていること。そこに加藤典洋の議論の真骨頂があり、最後に著者の具体的な対案が示される。それは、「国体化」した対米追従からの自立と日米安保の解消、国連の新しい位置づけと自衛隊を国連の指揮下に置くことなど、きわめてラディカルなアイデアが提示される。現在日本政府が負担している米軍の駐留経費負担額は総計44億ドルに上り、国連全体の年間予算の約二倍に当たるという事実が、この一見突飛な提案の背景にある。これが実現可能かどうか分らないが、しかし護憲と平和主義に停滞している現在の日本社会への真剣な問いかけではある。加藤典洋は、『アメリカの影』から始まり、『敗戦後論』を経て、一貫して「戦後」を思想的に問うてきた。もともと文芸評論家である著者が、最期に至るまで拘って取り組んできた足跡と提案に学ばねばならないことは確かだ。

河合隼雄『宗教と科学の接点』(岩波現代文庫)トランスパーソナル心理学の世界大会が京都であり、その報告から始まる。現代心理学の最先端が、宗教と科学の対話を目指しているのだという。著者は心理療法の現場の体験を踏まえて、科学と宗教の狭間の問題を具体的に取り上げる。『世界』に連載されたとき、断片的に呼んでいたはずで、既読感があった。心理療法者はクライアントを導いたり助けたりしてはならないこと、魂の深みでひたすら話しを聞き続けること、それは相当の熟練とエネルギーを要すること、むしろ本人の自己治癒の力を信じて寄り添うことの大切さを改めて教えられた。自分自身の牧会者としての痛苦な経験と数々の失敗!に改めて気づかされる思いだった。

日本SF作家クラブ編『ポストコロナのSF』(ハヤカワ文庫)信頼している作家や思想家たちが、Covid-19のパンデミックについて一向に発信しないことを不思議に思っている。新聞やテレビでは、ワクチンも含めて取り敢えずの対症療法的な議論に終始するばかりで、この難問の文明史的な意味について取り上げられることは少ない。思いついて、気鋭のSF作家20人によるポストコロナをテーマとするこの短編集を読んでみた。コロナウィルスに世界が侵蝕されるという事態を若手のSF作家たちがどう受け止めているかに関心をもって読まされた。味覚や嗅覚を失った人類、ITに管理された社会、リモートによるコミュニケーションが主流になった社会、マスクの常用化とその影響、身体接触を避ける社会の行く末等々、ユートピアならぬデストピアのイメージが次々に描かれ、その中での希望や人類の可能性についても触れられていて、興味深かった。(戒能信生)

2021年5月23日日曜日

 

2021年5月30日 午前10時30分

聖霊降臨節第2主日合同礼拝(No9

      司式 梅本 順子

    奏  黙 想        奏楽 向山 康子

招  詞  93-1-48

讃 美 歌  9(34節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編134・1-3

讃 美 歌  348(12節)

聖書朗読  詩編27・1-14

祈  祷

讃 美 歌  529(1,2節)

説  教  「引き寄せてくださる神」

                戒能信生牧師

讃 美 歌  465(12節)

使徒信条  (9341A

献  金              石井房恵

報  告

頌  栄  90(1,2節)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・戒能直子、奏楽・向山康子

・ライブ配信担当・野口倢司

CS教師会

・週報等発送作業(ご協力ください)

お茶の会は感染症拡大を避けるため差し控えています。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

 

牧師の日記から(318)「最近読んだ本の紹介」

藤本龍児『ポスト・アメリカニズムの世紀 転換期のキリスト教文明』(筑摩選書)マックス・ヴェーバーとハイデッガーという異質の知の巨人を折衝させて、そこに共通する問題意識、大量生産と大量消費に典型されるアメリカニズムへの批判を読み取り、それを手掛かりにポスト・アメリカニズムの動向を探ろうとする意欲作。ことに21世紀になってからのアメリカ社会の宗教状況を分析し、世俗化論の趨勢、公共宗教の可能性、政教分離原則の変遷、ネオリベラリズムと福音派の親和性、ポピュリズムと文化戦争、ポスト・コロナ社会の可能性など、多岐にわたる論点を展開する。もともと学術論文をまとめたもので、一冊の書物としてはまとまりがない印象。学ばされたことを一つ紹介すると、世俗化の進行が宗教の衰退を促すと従来考えられてきた。しかし21世紀になって、むしろ原理主義的な信仰理解やカリスマ運動、あるいは福音派の勃興など世界の宗教化現象が顕著となっている。この事態をどのように社会形成に汲み取っていくかが課題だというのだ。それは従来の単純な政教分離論やリベラリズムでは対応できないという主張を含む。その意味でベラーの市民宗教論から、ハーバーマスの公共宗教論へ、さらにラディカルに推し進めるべきことを示唆する。しかしその行く末にはかなり危険なものを感じるのだが…。

石井寛治編『石井家の人びと』(日本経済評論社)転入会された石井寛治さんから頂いた。逓信官僚であった父と音楽好きの母の間に生れた六男一女、そのそれぞれの生き様を記録している。大変優秀な家系で、いずれも努力家である子どもたちは、それぞれ薬理学者、建築家、NTT幹部社員、牧師夫人、経済学者、労働行政官などとして活躍している。その半ば近くがキリスト者で、戦争を挟んでクリスチャン家庭がどのように形成されたかの記録にもなっている。しかし何より日本経済史研究者としての石井寛治さんの歩みを知ることができる。研究者の自分史は数多あるが、七人兄弟姉妹の足跡を並行して取り上げるのは珍しい。興味深く読んだ。

久布白落実『廃娼ひとすじ』(中公文庫)婦人矯風会の創始者であり長く会頭を担った矢嶋楫子を調べる関連で、その姪で、やはり矯風会の会長を担った久布白落実の自伝を読んだ。楫子の死後、その不倫と出産の秘密を暴露した甥の徳富蘆花の痛烈な批判が知られるが、落実は既に楫子の生前にその告白を公にすべく準備していた。しかしその影響を考慮して生前には公表できなかったのだという。ともかく矯風会は、このスキャンダル?を乗り切り、その後もひたすら廃娼運動を推し進めている。この国の女性運動として驚嘆すべき歩みだが、矯風会の戦争責任という視点は乏しく、そのあたりに問題を感じざるを得ない。楫子が始めた日露戦争における兵士たちへの慰問活動にしても、どうしても国策協力という枠組みを突破できない。このあたりが明治期から大正期の矯風会と矢嶋楫子の評価の際の一つのポイントにならざるを得ないのだろうか。(戒能信生)

2021年5月16日日曜日

 

2021年5月23日 午前10時30分

聖霊降臨節第1主日合同礼拝(No8

      司式 橋本  茂

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-44

讃 美 歌  9(34節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編133・1-3

讃 美 歌  161

聖書朗読  ヨエル書3・1-2

            ルカ福音書6・43-49

祈  祷

讃 美 歌  346(1,2節)

説  教  「岩の上の立つ家」

                戒能信生牧師

讃 美 歌  343(1,2節)

使徒信条  (9341A

聖 餐 式  配餐・鈴木志津恵、橋本 茂

讃 美 歌  81(1,2節)

献  金             荒井久美子

報  告

頌  栄  90(1,2節)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(合同礼拝に合流)

・ライブ配信担当・西川穂

お茶の会は感染症拡大を避けるため差し控えています。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

2021年5月15日土曜日

 

牧師の日記から(317

59日(日)主日礼拝。ルカ福音書627-38の講解説教「汝の敵を愛せよ」。この金言が、東地中海の辺境の地から始まったキリスト教が数世紀を経て地中海全域に拡がっていくなかで、決定的な意味をもったとされる。ギリシアやローマの哲学や宗教に、このような倫理は見られないからだ。しかし現代において、この「愛敵」の思想をどのように受け止めるべきだろうか。マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」としている。これは、「愛敵」の教えの優れて現代的な解釈と言えるのではないか。具体的な敵がすぐに思い当たらない恵まれた私たちにとって、自分に直接関わりのない隣人を愛するように勧めているのだ。

10日(月)午前中、郵便局で教会宛の献金振込を引き出す。午後、西早稲田のNCAの事務所で定期刊行物の発送などの事務作業。帰宅後、準備をして、夜は日本聖書神学校の授業。この日は海老名弾正を取り上げる。

11日(火)このところ、婦人矯風会の創設者矢嶋楫子について調べている。浩瀚な伝記や三浦綾子の評伝はあるものの、楫子自身の文章がほとんど見つからないで往生している。しかし考えてみると、明治初期の女性が自分の内心の心情を表現する手段は限られていた。思いついて楫子の折々の短歌に注目している。キリスト教の歴史では、アウグスチヌスの『告白録』以降、自己の内心の葛藤や転換を表現する伝統がある。しかしこの国の文化には、内面を吐露することは好まれず、わずかに和歌に自分の心情を詠み込む習わしがあった。夜は山口里子さんの聖書ゼミをZoomで受講。

12日(水)午前中、近くの皮膚科で受診。時折急に腕や足が痒くなって腫れ上がる症状で、ジンマシンのせいだという。その原因は特定できないが、ストレス等が考えられるとのこと。思い当たるフシはないのだが・・・。抗ヒスタミン剤を処方され、症状は治まっている。午後は、明日から始まるNCAの連続講座「日本キリスト教史を読む」の準備。

13日(木)午後2時から「日本キリスト教史を読む」の第1回。既に20172019年の3年にわたって続けた講座だが、アンコール開講の要望が多く、リモートで開講することになった。この日は、前史としての中国伝道の歴史と、幕末期宣教師の来日と日本プロテスタント教会の出発を紹介する。全国から60名を越える受講者で有り難いが、リモートでどれだけ伝わっただろうか。Zoomを用いての講義は経験してきたが、60名を超えると、いくら双方向だと言っても反応が分らないのでやりにくい。

14日(金)午前中、門前仲町の歯科医で定期検診。歯も悪くなり、耳も遠くなり、視力も随分落ちてきている。つくづく73歳の自分の年齢を考えさせられる。Covid-19の感染拡大は収束せず、緊急事態宣言も延長された。30日に予定されている松野俊一名誉牧師の記念礼拝・納骨式を延期すべきかどうか、長老の皆さんにメールで意見を徴し、またご遺族とも相談する。(戒能信生)

2021年5月9日日曜日

 

2021年5月16日 午前10時30分

復活節第7主日礼拝(No7

      司式 鈴木志津恵

    奏  黙 想        奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-44

讃 美 歌  9(3、4節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編132・1-18

讃 美 歌  335(1,2節)

聖書朗読  エレミヤ書10・1-10

            ルカ福音書6・37-42

祈  祷

讃 美 歌  453(1,2節)

説  教  「人を裁くな」

               戒能信生牧師

讃 美 歌  492(1,2節)

使徒信条  (9341A

献  金             荒井 眞

報  告

頌  栄  90(1,2節)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・齊藤織恵、奏楽・戒能直子

・ライブ配信担当・野口倢司

・礼拝後、礼拝後「オリーブの会」「大森意索医師に聞くコロナ・ワクチンのこと」お話し・大森意索

。お茶の会は感染症拡大を避けるため差し控えています。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

2021年5月7日金曜日

 

牧師の日記から(316)「最近読んだ本の紹介」

斎藤幸平『人新世の資本論』(集英社新書)条谷泉さんを初め、何人かの知人から勧められた話題の新書。気候変動による地球の生態学的危機が迫っている。Covid-19によるパンデミックもその一つと言えるだろう。この危機の真の原因が資本主義そのものにあると喝破する著者は、マルクスの『資本論』を読み直し、さらにマルクス晩年のエコロジーや共同体論に対する関心を読み解いて、脱成長論を主張する。つまり経済成長を基本とする資本主義と地球環境の保全は相容れないと断定する。既存のSDGs(持続可能な開発)ではとても間に合わず、各国で取り組まれている脱炭素政策でも気候変動を防げないとする。それではどうしたらいいか。著者は改めて脱成長コミュニズムヘの抜本的な転換を提案する。それは帝国主義的生産様式を乗り越えて、使用価値経済への転換を目指す道だという(これは宇沢弘文の議論と重なる)。そこでは例えば協同組合運動が新たな視点から再評価され、それは既に世界の各地で様々な萌芽が見られるという。言われていることは納得できるが、その実現可能性はあるのだろうか。賀川豊彦が共産主義に対する代替案として協同組合運動と世界連邦運動を提唱したことは知られている。しかしこの著者は、強欲な資本主義を乗り越える道として改めて協同組合運動等による脱成長へのパラダイム・シフトを主張するのだ。何より分かりやすい文体に感心した。このところニュー・アカデミズムの論考は、難解な学術用語が多用されていて辟易することが多いが、この34歳の若き研究者はごく平易な文体に挑戦していて感心させられた。因みに、本書は2021年の新書大賞を受賞したとのこと。

 鵜沼裕子『逢阪元吉郎』(新教出版社)著者から恵贈されて目を通した。逢阪元吉郎は、大正から昭和前期にかけて活躍した牧師でありジャーナリスト。特に昭和4年以降、正力松太郎に招かれて読売新聞の宗教欄主筆として健筆を振るった。それが右翼の憤激を買い、非道な暴行を受けたことがきっかけで大病する。その大患の経験を経て、独特の聖餐論や信仰理解を展開した特異な神学者。説教よりも聖餐を重んじるその神秘主義的信仰理解は、主観的な贖罪信仰に偏った日本プロテスタン史の中で異彩を放っている。その逢阪元吉郎の本格的な評伝で、家族の事情やその影響を受けた人々の証言などを幅広く取り上げていて、一気に読まされた。

 添田孝史『東電原発事故10年で明らかになったこと』(平凡社新書)東日本大震災と福島第一原子力発電所の爆発事故から10年が経過した。爆発事故の原因や責任追及は、政府事故調査委員会の調査でも、また新聞報道などでも未だ明確に解析されていない。本書は、特に東電を被告とするこの間の裁判の過程で明らかになってきた事実を克明に紹介してくれる。そして事故が何故防げなかったかに具体的に迫っている。東京電力の会長や社長たちは「無罪」を主張しているが、そこには東電と政府による明かな不作為があり、しかも資料隠しがあったという。(戒能信生)

2021年5月2日日曜日

 

2021年5月9日 午前10時30分

復活節第6主日礼拝(No6

      司式 常盤 陽子

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-44

讃 美 歌  9(1、2節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編131・1-3

讃 美 歌  424(12節)

聖書朗読  列王記上17・1-

            ルカ福音書6・27-36

祈  祷

讃 美 歌  480(12節)

説  教  「汝の敵を愛せよ」

               戒能信生牧師

讃 美 歌  482(1、2節)

使徒信条  (9341A

献  金             橋本 茂

報  告

頌  栄  90

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・西川穂、奏楽・内山央絵

・ライブ配信担当・大森意索

・礼拝後、聖書を読む会「ダビノで妻ミカル」梅本順子 

・お茶の会は感染症の拡大を避けるため、当面差し控えています。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用ください。

2021年5月1日土曜日

 

牧師の日記から(315

吉川浩満『理不尽な進化』(ちくま文庫)ダーヴィンの進化論をめぐる思想史で、これまでの様々な論争や議論を大掴みに出来て学ばされた。先ず、現在生存している生物は、この地球上に存在した生命種の001%だという。つまりほとんどの生物がその進化の過程で絶滅していったのだ。その絶滅の仕方の典型が、恐竜たちが滅びた白亜紀の天体衝突で、それまで強者であった生物のほとんどは死滅し、ほんの一部の生命が生き残り現在に至るという。したがって通常考えられるような生存競争とか弱肉強食、自然淘汰といった単純な進化論では説明し切れないという。「理不尽な進化」と言われる所以だ。しかもこの地球の歴史で、恐竜を滅ぼしたような大規模な絶滅が、少なくとも五回以上繰り返されてきたのだという。現在Covid-19によるパンデミックに世界中が震撼しているが、これもまた「理不尽な進化」の一つと言えるのかもしれない。進化論をめぐるグールドとドーキンスの有名な論争(私は知らなかった)の経緯と、そこに残された課題に執拗に著者は拘る。その過程で、ライプニッツから始まり、カントからヘーゲル、コント、スペンサー、ヴィドゲンシュタイン、ハイデガー、ガダマー、フーコーと、知の巨人たちが次から次へと取り上げられていて頭がクラクラするほど。この国では、明治の初めに進化論が紹介されて、ほとんど違和感なく受け容れられたとされる。アメリカなどでは、宗教的な理由で今でも進化論を受け容れない人が多数存在するのと大違いではある。しかしそこで理解されている進化論は、本来のダーヴィニズムとは似て非なるものではないかという指摘に考えさせられる。

上野千鶴子『在宅ひとり死のススメ』(文春文庫)『おひとりさまの老後』を書いた上野千鶴子が、今度は病院や施設ではなくて、在宅での独居死を勧める挑戦的な一作。特に参考になるのは、介護保険制度(著者は高く評価する)が政府によって次第に骨抜きにされ、変質させられている事実の指摘。著者が接触した各地の意欲的な介護労働者たちの声が反映されている。また認知症についての理解も考えさせられた。認知症を悪者視するのではなく、そのままに受け容れよと勧めているのだ。

稲泉連『本をつくるという仕事』(ちくま文庫)現在では書物の編集もIT化によって大きく変わってしまった。最早失われそうになっている活字、活版印刷、製本、校閲などの専門家や職人たちにインタビューして、本造りの原点を確認しようとするドキュメント。友人の下町の実家が印刷屋で、活字が棚にぎっしり詰まっていた工場の光景が強く印象に残っている。

『キリストに従う 雨宮栄一牧師追悼集』(私家版)私もこの出版に多少関わっている。山梨教会、阿佐谷東教会、東駒形教会で雨宮牧師に牧会された信徒たちの証言集になっている。教会員に学び続けることを求めて、読書会を自ら指導した姿が彷彿とされる。私もまた、この牧師によって育てられた一人であることを改めて感謝をもって想い起こす。(戒能信生)