2021年10月31日日曜日

 

2021年11月7日 午前10時30分

永眠者記念礼拝(No32

      司式 橋本  茂

    奏  黙 想        奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-47

讃 美 歌  24

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編7・1-18

讃 美 歌  194(12節)

聖書朗読  創世記15・1-6

Ⅱコリント書4・7-15

祈  祷

讃 美 歌  385(1234節)

永眠者氏名朗読          石井 房恵

説  教  「この土の器が用いられて」

            戒能 信生牧師

讃 美 歌  494(123節)

使徒信条  (9341A

献  金  対外献金「東支区三宅島伝道所支援のために」      野口 倢司

報  告

頌  栄  89(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校 お話し・齊藤織恵、奏楽・内山央絵

・礼拝後、「信仰の先達を偲んで」(お茶の会)

・ライブ配信担当・西川 穂

・礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

・定例長老会

2021年10月30日土曜日

 

牧師の日記から(341

1017日(日)主日礼拝。ルカ福音書91827の講解説教「十字架を背負って」。ペトロの信仰告白に対して、イエスの受難予告が語られる。その中で「自分を捨て、日々、自分の十字架を背負って我に従え」と命じられている。しかし「十字架」という言葉は、ゴルゴタの丘でのイエスの十字架刑において初めて登場する。したがってこの言葉は、イエスの受難の道に従おうとする初代教会の表現ということになる。以来、代々の教会はローマ帝国の残酷な処刑法であった「十字架」を、自らのシンボルとして掲げてきたのだ。午後、久しぶりにフルート合奏団らふぁえるの練習が行なわれる。感染症が下火になってきたからでもあるようだ。

25日(月)午前中、東駒形教会での月曜会に参加。関田寛雄先生の『目はかすまず、気力は失せず』の第一部を、川島温美牧師の紹介と発題で取り上げる。関田先生の聖書解釈は、読む度にインサイトを与えられる。午後帰宅し、準備をして、夕方から日本聖書神学校の授業。この日は植村環を取り上げる。この国を代表する女性教職として、教団婦人局長として、そしてYWCA会長として、植村環は戦時下を生きた。その間の時局迎合的な文章とインナーサークルでの証言の矛盾について考えさせられる。

26日(火)午前中、西片町教会の山本祐司牧師が来られて、後任牧師の相談。様々な経緯があったが、ようやく基本的な方向性が見えてきた。しかしそれは私自身が重荷を負うことにつながりそうだ。午後、11月の予定表の作成や、その他の事務仕事。書斎の片づけもしなければならない。

27日(水)午後、上林順一郎牧師の創世記の聖書講座にZoomで参加。洪水とノアの箱舟が取り上げられる。いつもながらよく準備された講義に教えられるところが多い。緑陰書房から、満州開拓基督教村関連の追加資料が送られてくる。もう10年越しの仕事で、来年ようやく資料集が刊行されることになり、その解説を書かねばらないのだ。

28日(木)午後、キリスト教会館のNCAの事務所に行って事務仕事の処理。私の連続講座第Ⅰ期が12月で終るので、受講者たちヘのアンケートの作成も。振替用紙を注文するので郵便局に行ったところ、制度がまた変わるとのこと。昨年オンライン化され、振替手数料が値上げされたばかりだが、来年1月からそれに加えて現金振込の場合加算料金を取ることになったという。ITMの利用促進のためとのことだが、その広報も不充分なまま。郵貯銀行の最近の遣り口はどうも納得しかねることが多い。

29日(金)午前中、門前仲町の歯科医院へ。この年になると、眼も耳も、そして歯もガタが来ている。夜は北支区連合祈祷会委員会にZoomで参加。コロナ後の連合祈祷会の在り方を話し合う。後は、明日の納骨式の準備。

30日(土)午前中は、八王子霊園で故・安藤美恵さんの納骨式。ご遺族と一緒に昼食を頂きながら、105歳で亡くなった美恵さんの想い出を聞く。帰宅して夕方、NCAの理事会にZoomで参加。問題は山積!(戒能信生)

2021年10月24日日曜日

 

2021年10月31日 午前10時30分

聖霊降臨節第24主日礼拝(No31

      司式 石井 房恵

    奏  黙 想        奏楽 向山 康子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  19(12節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編6・1-11

讃 美 歌  351(12節)

聖書朗読  列王記上21・1-29

祈  祷

讃 美 歌  476(12節)

説  教  「ナボトの葡萄畑 王との対決」

            戒能 信生牧師

讃 美 歌  514(125節)

使徒信条  (9341A

献  金             石井 寛治

報  告

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(お休み)

・礼拝後、入門の会「受洗者の年齢別構成」戒能牧師

・ライブ配信担当・西川 穂

・礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

CS教師会

・週報発送作業(ご協力ください)

次週永眠者記念礼拝の会堂設営作業

2021年10月23日土曜日

 

牧師の日記から(340)「最近読んだ本の紹介」

中村哲・澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(岩波現代文庫)アフガニスタンから米軍が引き上げ、タリバンが再び実効支配するようになったというニュースを見ながら、この20年間のアフガンの民主化に向けての世界の努力は何であったかを改めて考えさせられる。それもあって、文庫化されたこの本を再読した。澤地さんが聞き手であるだけに、これまであまり知られていなかった中村哲さんの足跡に触れることが出来る。彼が『麦と兵隊』で知られる作家火野葦平の甥に当たるという事実も、この本で初めて知ったのだった。しかし何より、地方の勤務医であった中村さんが、JOCS(キリスト教海外医療協力会)から派遣されてパキスタンのハンセン病病院に赴任し、やがて単に医療奉仕にとどまらず、戦争で荒廃したアフガンの地を文字通り切り拓くために、水路を掘って灌漑事業に取りくむ活動が展開される。その間の中村さんの取り組みの軌跡が淡々と語られる。傑作なのは、ワーカーが火傷を負ったとき、周囲の者がその治療にあれこれ口を出すが、誰も中村さんに相談しない。「俺は医者だぞ!」と中村さんが言い出して、ようやく中村さんが医者であったことを思い出すというエピソード。アフガンの平和と社会の回復のためには、武力によるのではなく、なにより現地の人々と共に生きることであり、そのために中村哲さんの働きと死があったことを改めて教えられる。本書の表題は、その中村哲さんとその活動を支えたペシャワール会の基本的な姿勢を伝えている。そしてそれこそが世界の平和のために必要とされている。

阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』(中公新書)バビロニア帝国を滅ぼし、捕囚の民を解放したクロス王によって創始された古代ペルシア帝国。紀元前6世紀からアレキサンダー大王によって滅ぼされるまで300年に渡って中東を支配したアケメネス朝ペルシアの歴史は、これまでヘロドトスを初めとするギリシア側の文献をもとに理解されてきた。それを、サイードの『オリエンタリズム』の提起を受け、考古学研究等を踏まえてペルシアの側からその歴史を再構成しようとする最近の研究動向が紹介されている。旧約聖書では、Ⅱイザヤやエズラ・ネヘミヤ記などにほんの片鱗が伺われるだけだが、改めて「史上初の世界帝国(副題)」を築いたペルシアの歴史を学ばされた。

水田洋『「知の商人」たちのヨーロッパ近代史』(講談社学術文庫)筑摩書房の『経済学全集』の月報の連載をもとに、グーテンベルク以降の印刷や出版に関わる人々の人となりと様々なエピソードが縦横に紹介される。書き手である作家や思想家ではなく、ヨーロッパ各地で出版社や書店を担った「知の商人」たちの存在に注目しているところが興味深い。「思想の社会的存在形態」を含めた社会思想史という着眼点に共感するが、その博覧強記ぶりには驚くばかり。(戒能信生)

2021年10月17日日曜日

 

2021年10月24日 午前10時30分

聖霊降臨節第23主日礼拝(No30

      司式 大森 意索

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  19(34節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編5・1-13

讃 美 歌  115(123節)

聖書朗読  出エジプト記20・1-

ルカ福音書9・19-27

祈  祷

讃 美 歌  549(134節)

説  教  「十字架を背負って」

            戒能 信生牧師

讃 美 歌  534(12節)

使徒信条  (9341A

献  金              荒井 眞

報  告

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(お休み)

・ライブ配信担当・荒井 眞

・お茶の会は感染症の拡大を避けるため、今しばらく差し控えたいと思います。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

・らふぁえる練習

2021年10月16日土曜日

 

牧師の日記から(339

1010日(日)主日礼拝。ルカ福音書91017節の講解説教「五つのパンと二匹の魚」。福音書に度重ねて紹介されるパンの奇跡を取り上げる。その合理主義的な解釈の限界を、私の駆け出しの頃の失敗を通して紹介する。説教の後半で、自分の幼年時代の小さな体験を紹介すると、皆さんが笑ってくれた。説教における「笑い」の要素について、改めて考えさせられる。私はしばしば自らの失敗の経験をユーモアを交えて話すことがあるが、これは許されることなのか自問せざるを得ない。

11日(月)午後、西早稲田のNCAの事務所に行って、機関誌『はなしあい』と神学生交流プログラムの募金依頼の発送作業。夜は日本聖書神学校の授業で、金井為一郎を取り上げる。この神学校の創立者で、祈りと霊性の人として知られるが、残された日記に見られる戦時下の時局観との関連を考えさせられる。その神秘主義的な信仰理解と大本営発表そのままの時局観が並列しているところに、深刻な問題があるのではないか。

12日(火)一日在宅。夜は山口里子さんの聖書ゼミにZoomで参加。終了後、来年6月に来日するアメリカの聖書学者ベルナデッテさんの公開講演会の打ち合わせ。感染症の状況がどうなるか不明なので、このような企画の準備は苦労が多い。

13日(水)しばらく聖書を学び祈る会を休止にして来たが、11月から第2、第4水曜日の午前中に再開しようと考えている。個人的なことだが、私の妹の真理が、先週脳梗塞で入院した。この日の午後、直子さんと二人で見舞いに行くつもりだったが、少し体調が悪いので、もう少し状態の良いときに来てくれと連絡が入る。二つの違いの妹が、脳梗塞で倒れたのはショックだった。かなり後遺症も残っているようで案じている。私自身もいつ何時同じようなことがあるかも知れないと考えざるを得ない。

14日(木)午後、NCAの連続講座(Zoom)で内村鑑三を取り上げる。登録が90名近くで、この日も50名以上の人が全国で受講してくれるので、気を抜けない。1時間半の講演をして、その後質疑応答が終ると、どっと疲れが出る感じ。8月末にCOVID-19で亡くなった山下ひとみさんの兄上から手紙が届く。来年3月頃、簡素な記念会をすることになったとのこと。

15日(金)午前中、西片町教会に出向き、山本裕司牧師と人事のことで相談。ふさわしい後任者が与えられることを期待しているが、やむをえない場合は代務者を置いて、一年待つ可能性もある。この節、牧師の人事はなかなか容易ではない。

16日(土)午前中、聖書と人間を考える会。西村正寛さんがブレイディーみかこの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を取り上げて、イギリスの教育事情を紹介してくれる。午後、荒井博さん夫妻が来てくれて、柿の実の収穫と剪定作業をしてくれる。老木だが今年は成り年のようで、たくさんの実が成っている。(戒能信生)

2021年10月10日日曜日

 

2021年10月17日 午前10時30分

聖霊降臨節第22主日礼拝(No29

      司式 鈴木志津恵

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  19(12節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編4・1-9

讃 美 歌  549(123節)

聖書朗読  ヨハネ福音書6・45-51

祈  祷

讃 美 歌  566(12節)

説  教  「イエス・キリストを追って」

            齊藤織恵神学生

讃 美 歌  550(124節)

使徒信条  (9341A

献  金             荒井久美子

報  告

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(お休み)

・ライブ配信担当・野口倢司

・礼拝後の集会(16:00)北支区社会委員会講演

 「入管法の問題」講師・伊藤朝日太郎(弁護士・大泉教会信徒)(Zoom

・お茶の会は感染症の拡大を避けるため、今しばらく差し控えたいと思います。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

2021年10月9日土曜日

 

牧師の日記から(338)「最近読んだ本の紹介」

M・ディベリウス & H・コンツェルマン『牧会書簡注解』(教文館)訳者の山口雅弘さんから贈られた。注解書なので通読というわけにはいかないが、序論と訳者のあとがきに目を通した。テモテ書やテトス書などの牧会書簡は、まだ自分の講解説教で取り上げたことがない。2世紀初め頃に書かれた手紙で、新約諸文書の中で最も遅い時期の成立とされている。しかし古典とも言うべきこの注解書の翻訳が出たので、これは牧会書簡にも取り組まなければならないかと考えさせられている。以前にも書いたことがあるが、牧師は新約聖書の全巻を説教し終えると、死ぬか隠退すると聞いたことがある。牧会書簡だけでなく、まだへブル書も黙示録も取り上げていない。まだ牧師としての仕事がもうしばらく続くということか。

杉本智俊『新約聖書の考古学』(河出書房新社)前著『旧約聖書の考古学』に続いて新約編が出たので目を通した。考古学的な写真が満載で楽しいが、私にはちょっと文字が小さすぎる。牧師は聖書の各文書を通して福音を語ることを常としているので、考古学的な観点が見落とされがちになる。この本で改めて教えられたのは、ヘロデ大王によって建設された港湾都市カイサリアのローマ風の建築や、ガリラヤ周辺で発掘されたシナゴグの遺構。2000年昔の出来事を見てきたように話すためには、このような考古学的なアプローチも欠かせないと感じさせられた。

養老孟司・中川恵一『養老先生、病院に行く』(X-knowledge)医学部解剖学教室の教授であった養老さんは、医者嫌いで知られている。それが、具合が悪くなって26年ぶりに東大病院で検査を受けることになる。教え子の中川医師によって心筋梗塞が発見され、ステント治療を受ける。危なかったのだ。その顛末を、主治医との共著で明らかにしている。中でも興味深かったのは、中川医師が、がん検診の必要を説きながら、但し甲状腺癌と前立腺癌は見つけなくてもいいと言明していること。つまりこれらの癌は、致死率が低いにもかかわらず、検査技術が上がって、必要ない人にまで過剰治療をしているというのだ。当方は2年前に前立腺癌の手術を受けており、今さらそんなことを言われてもという気になってしまうが…。

阿部志郎『福祉に生きる君へ』(燦陽出版社)日本聖書神学校の受講生から頂いて目を通した。キリスト教社会福祉の世界では、神さまの次に尊敬されている?阿部志郎先生の講演を集めたもので、いつもながら感銘深く読まされた。中でも岡山孤児院の石井十次に関する示唆が参考になる。今年で96歳になる阿部先生の薫陶を受けて社会福祉の道に進んだ人は多く、その人々の歩みも紹介されている。以前仕えていた東駒形教会で、何度か阿部先生に来ていただいて、職員研修のための講演をしていただいた。まるで牧師のような語り口で(父上が、戦前のメソヂスト教会の監督として知られる阿部義宗牧師)、原稿も見ずに分かりやすく、そして実に明晰に語られるその口調を思い出した。(戒能信生)

2021年10月3日日曜日

 

2021年10月10日 午前10時30分

聖霊降臨節第21主日礼拝(No28

      司式 常盤 陽子

    奏  黙 想        奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  19(34節)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編3・1-9

讃 美 歌  353(12節)

聖書朗読  申命記4・1-8

ルカ福音書9・10-17

祈  祷

讃 美 歌  356(12節)

説  教  「五つのパンと二匹の魚」

            戒能 信生牧師

讃 美 歌  469(123節)

使徒信条  (9341A

献  金            橋本 悠久子

報  告

頌  栄  88(二度繰り返して)

派遣・祝福

後  奏 

  

【本日の集会】

・教会学校(お休み)

・ライブ配信担当・大森意索

・礼拝後の集会 「私の愛唱讃美歌」荒井 眞

・お茶の会は感染症の拡大を避けるため、今しばらく差し控えたいと思います。礼拝堂の後ろに飲み物を用意していますので、必要な方はご利用下さい。

2021年10月2日土曜日

 

牧師の日記から(337)「最近読んだ本の紹介」

芝健介『ヒトラー 虚像の独裁者』(岩波新書)故・雨宮栄一先生の遺稿『反ナチ抵抗運動とモルトケ伯』の原稿整理をしている関係で、必要に迫られて読んだ。1933年にヒトラーが政権に就いて以降のナチス政権については、それに抵抗した告白教会の闘いの記録からある程度知っていた。しかしそれ以前の若い時代のヒトラーや、多数存在した右翼政党の中からヒトラーが頭角を現わしていく経緯については、詳しくは知らなかった。本書は、『我が闘争』を初め、虚実取り混ぜたヒトラー伝説を批判的に解体し、膨大な諸研究を整理して、史実に即したヒトラー像を提示してくれる。さらに戦後のヒトラー像の変遷とその問題も明らかにしている。時あたかもドイツの政権交代が行われ、この国でも菅政権が終焉を迎え、自民党総裁選挙の渦中で読んだこともあり、政治の難しさを考えざるを得なかった。価値観が多様化して格差と分断が進行している現代社会で、我々がどのように政治に対処すべきかを考えさせられた。

増田四郎『ヨーロッパ中世の社会史』(講談社学術文庫)ヨーロッパ中世史研究の泰斗が、ゲルマン民族の移動によるローマ帝国の崩壊以降の中世ヨーロッパ史を概観してくれる。ゲルマンの村落共同体の特質、中世都市の成立と商業の勃興、そして封建国家の成立まで、実に多くのことを学ばされた。特にローマ帝国崩壊以降、ヨーロッパでは「世界帝国」が成立しなかったという指摘、また支配層の歴史からではなく、民衆の生活実態(「ゲルマン民族態」)から社会史を読み解こうとする姿勢に学ばされた。

瀬木慎一『画狂人北斎』(河出文庫)『富嶽三十六景』や『北斎漫画』など数々の北斎の絵は観たことがあっても、その長い生涯(89歳で死去)のどの時点で描かれたのか、それが北斎の画業全体にどのような位置を占めるかなどを初めて知ることができた。謎の多い北斎の生涯を、様々な伝説を整理して解説してくれる。墨田区に出来た北斎美術館に行きたいと思いながら、コロナ禍もあってまだ果たせていないが、いつか行ってみたい。

佐藤優『13歳からのキリスト教』(青春新書)著者の佐藤優さんとは、彼がまだ外務省にいた頃、ある研究会で会っている。以来、彼の書いた主なものは目を通してきた。なにせ同志社神学部を卒業し、フロマートカを初め現代神学に精通していて、その神学的な観点?から現実政治や外交を縦横無尽に切り分けるのだから面白くないわけがない。私が理事をしているクリスチャン・アカデミーを献身的に支えてきた故シュペネマン先生の教え子でもあり、その関係から、今でもアカデミーのために、毎年無償で講演をしてくれている。つい先日もリモートでその講演を聞いたばかり。しかしなかなか癖のある人物で、断定的なその言説に躓く人も少なくない。しかし本書は、実に真面目で率直なキリスト教入門になっている。そこで分かりやすく述べられている聖書理解や信仰理解に、私自身はほとんど違和を覚えなかった。若い世代にお勧めの一冊ではある。(戒能信生)