2022年10月30日日曜日

 

2022年11月6日 午前10時30分

永眠者記念礼拝(聖霊降臨節第23主日)(No29

司式 大森 意索

前  奏  黙想    奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  32

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編13・1-6

讃 美 歌  533

聖書朗読  ダニエル書12・5-13

祈  祷

讃 美 歌  386

永眠者氏名朗読           石井房恵

説  教  「主よ、いつまでなのですか」

戒能信生牧師

讃 美 歌  461

使徒信条  (9341A

献  金              高岸 徹

 

報  告

頌  栄  90

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校 お話・戒能牧師、奏楽・戒能直子

・礼拝後、信仰の先達を偲んで(お茶の会)

・ライブ配信担当・荒井久美子

・定例長老会

・礼拝堂の後方に飲み物が用意されています。、水分補給にご利用ください。

 

牧師の日記から(390

1023日(日)主日礼拝。長尾有起先生の担当で、ヨハネ福音6115の講解説教「分かち合って食べる」。「これっぽっちでは何の役にも立たない」とされるパンと魚を皆で分け合う時、そこに奇跡が起こるというメッセージを改めて新鮮に聞くことができた。引き続き、故・生嶋ひろみさんの記念礼拝。昨年12月に92歳で亡くなったのだが、コロナ下でもあり、また故人の遺志で慶応病院に献体されたこともあって、葬儀ができなかったのだ。7月に遺骨が戻って来て、ご親族も交えて、共にひろみさんの生涯を偲ぶ。その後フルート合奏団らふぁえるの練習。合間を縫って散歩。

24日(月)女子学院の創立記念日で「矢島楫子の生涯」について講演。楫子については、三浦綾子さんの小説があり、映画化もされているが、その多くは聞き書き・伝聞によるもので、梶子自身が書いたものはきわめて少ない。しかし明治から大正期にかけて、梶子は最も年長の女性信徒であり、また女子学院院長、婦人矯風会会頭として稀有な存在だった。儒教的素養とキリスト教信仰が重ね合わされた折衷型の思想とも言えるが、しかし何より楫子は教育者であり、粘り強い実践家だった。600名を越える高校生にどれだけ伝わっただろうか。夜は日本聖書神学校の授業。海老名弾正についての受講生たちのリーディングレポートに優れた報告があった。

25日(火)午前中散歩。先日の若葉町散策で神学生の小川和孝さんに教えてもらったルートを辿る。すなわち津之守坂から新宿通りに出て、須賀神社の裏から闇坂を降りて若葉公園に至り、そこから鮫ヶ橋貧民窟のメインストリートだった曲がりくねった長い路地を通って二葉保育園に出て、南元町公園から陸橋に上がって中央線・総武線を見降ろし、サレジオ会修道院から鉄砲坂に抜け、オテル・ド・三国の前を通って若葉教会に出る約6千歩のコース。この日から急に気温が下がり書斎のストーブをつける。

26日(水)午前中、聖書を学び祈る会。マタイ福音書20115の「葡萄園と労働者の譬」を取り上げる。これからしばらくイエスの譬え話を学ぶこととする。午後、散歩。夜は、来年3月の神学生交流プログラムの資料を作成して関係者にチェックを依頼する。『時の徴』次号の井上良雄先生の小説教の翻刻と高倉徹総幹事日記の原稿整理の作業。

27日(木)午前中、散歩。11時から自転車でNCAの事務所に行き、事務仕事。帰宅後、午後1時半から岸本和世牧師の葬儀にZoomで参加。岸本先生は一度千代田教会の主日礼拝に出席されたことがある。1970年当時、教団の幹事だった牧師は、これですべて亡くなったことになる。夜、116日の永眠者記念礼拝のプログラムと11月の予定表を作成する。

28日(金)午前中、散歩。11月の柏木義円公開講演会での発題の準備に手を付ける。義円の日記の精読から、日常生活に現われる義円の思想と信仰に迫る試み。日記は公開を前提とせず、後の価値観が入り込まない一級の資料と言える。入門の会での使徒信条の解説の準備も。(戒能信生)

2022年10月23日日曜日

 

2022年10月30日 午前10時30分

聖霊降臨節第22主日礼拝(No29

司式 高岸 泰子

前  奏  黙想    奏楽 向山 康子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  5

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編58・1-12

讃 美 歌  491

聖書朗読  ヨエル書3・1-5

祈  祷

讃 美 歌  204

説  教  「老人の夢、若者の幻」

戒能信生牧師

讃 美 歌  346

使徒信条  (9341A

献  金              高岸 徹

報  告

頌  栄  91

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(休校)

・オリーブの会「使徒信条④」戒能牧師

・ライブ配信担当・荒井眞

・礼拝堂の後方に飲み物が用意されています。、水分補給にご利用ください。

・週報等発送作業

2022年10月22日土曜日

 

牧師の日記から(389)「最近読んだ本の紹介」

森安達也『東方キリスト教の歴史』(ちくま学芸文庫)「卓越したスラブ学者であり、この国における東方キリスト教研究のパイオニアであった著者」(浜田華練の解説)の論考が集められている。東方キリスト教を研究するためには、古典ギリシア語、古典ラテン語を初め、ロシア語や各スラブ語、さらに英語、フランス語などの現代語も習得しなければならないという。著者はキリスト者でないにもかかわらず、この国では全くマイナーな正教会史に分け入って、驚くほど精緻な研究をしている。例えば、東方正教会における旧約聖書(70人訳)の受容史、神秘思想に関する論争、ボスニア教会の消長、ポーランドとウクライナにおける宗教問題等、かなり専門的な論考が収録されている。おそらくウクライナ戦争との関連で、絶版になっていた本書が文庫化されたのだろう。東方教会の歴史には詳しくないので勉強になったが、この国にもこのような研究者がいたのかと改めて驚かされた。最後に収録されたロシア正教会における講演で、正教会への穏やかな批判と注文をしているが、著者の人となりを想像させる。

飯清『主旋律と装飾音』(私家版)長く霊南坂教会の牧師であり、教団議長も担った故・飯清牧師の自伝。『時の徴』連載の高倉徹総幹事日記の参考にするため、翻刻作業をお願いしている青地恵さんから頂いた。葬儀の際に配られた由だが、愛媛県今治市の飯家の由来から始まり、一家がクリスチャンになった経緯、回漕業の家業を継ぐべく同志社商学部に進んだものの途中で神学部に移って牧師になった事情、戦争末期に学徒兵として招集された海軍での経験、戦後、アメリカ留学を挟んで、倉敷教会を経て霊南坂教会牧師になり、教団議長などキリスト教界の要職を担ったその生涯が楽しく綴られる。音楽を初め何ごとにも有能で、経理にも明るかった飯さんだが、こうもあっけらかんと自慢話しをされると、皮肉の一つも言いたくなる。しかし多くの教会員たちから愛された牧師だったことは確かで、そこに組合教会の一つの伝統を見ることができる。

へニング・マンケル『イタリアン・シューズ』(創元社推理文庫)マンケルは、スウェーデンを代表するミステリー作家で、刑事ヴァランダー・シリーズは世界的なベストセラーに数えられている。私も翻訳されたものはすべて目を通しているが、先年亡くなってガッカリしていた。ところが、マンケルはこのような本格的な大作にも取り組んでおり、それが改めて翻訳されたという。主人公の中年の医師は、外科手術で事故を起して医者を廃業し、それ以来12年も、漁師であった祖父の所有していた孤島に独りで隠遁生活をしている。言わば引き籠もり状態の彼の許に、昔捨てた女性が訪ねて来る。それを皮切りに、彼女との間に生まれた娘と初めて出会い、さらに自らの犯した医療事故の被害者の女性と再会する。その過程で次第に主人公が人間性を回復していく経緯が、現在のスウェーデン社会の変容と重ね合わせて語られる。久しぶりのマンケル節を堪能した。(戒能信生)

 

2022年10月23日 午前10時30分

聖霊降臨節第21主日礼拝(No28

司式 戒能信生牧師

前  奏  黙想    奏楽 釜坂 由理子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  5

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編57・1-12

讃 美 歌  198

聖書朗読  ヨハネ福音書6・1-15

祈  祷

讃 美 歌  17

説  教  「分かち合って食べる」

長尾有起牧師

讃 美 歌  542

使徒信条  (9341A

献  金             津金 寿子

報  告

頌  栄  91

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(休校)

・主日礼拝に引き続き、故・生嶋ひろみ記念礼拝(司式・戒能牧師) 受付にプログラムが用意されています。是非ご出席ください。

・ライブ配信担当・荒井眞

・礼拝堂の後方に飲み物が用意されています。、水分補給にご利用ください。

・らふぁえる練習

2022年10月15日土曜日

 

牧師の日記から(388

109日(日)主日礼拝。ルカ福音書136-9の講解説教「実の成らない無花果の木の譬」。無花果の木は日本原産ではなく、戦国時代末期、ポルトガル船で長崎に持ち込まれ、切支丹たちによって各地に移植されたという。一説には、江戸幕府による切支丹探索の際、無花果の木が植えられている家が一つの目印になったとも伝えられる。聖書にはしばしば無花果の木が登場するが、この箇所もその一つ。ぶどう園に植えられた無花果の木が三年経っても実が成らないので、主人が切り倒してしまえと園丁に命じる。園丁は主人をなだめ、「今年もこのままにしておいてください。周りを掘って肥やしをやってみます。そうすれば実が成るかも知れません」と執り成している。伝統的には、一向に結果が出ないこの世界に裁きを迫る神を、懸命に執り成している主イエスを指し示しているとされる。戦乱が相次ぐこの世界ヘの私たちの責任が問われている。雨で散歩は中止。

1010日(月)午前中、散歩。午後から、11月に予定されている柏木義円公開講演会の案内を印刷し、直子さんに手伝ってもらって賛助会員に発送する作業。『富坂だより』に同胞教会史研究会の報告の短い原稿を書いて、担当者に送付。雨宮栄一著『反ナチ抵抗運動とモルトケ伯』がもうすぐ刊行になるので、その寄贈先のリストを美枝子夫人と相談する。雨宮先生のドイツ教会闘争研究の最後の仕事を多くの人に読んでもらいたい。

11日(火)午前中、散歩。女子学院の創立記念講演会で矢島楫子について講演することになっているので、その準備に取りかかる。しかし450人の高校生を対象に話すのは厄介で、難渋している。夜は山口里子さんのマルコ福音書の聖書ゼミにZoomで参加。10章までの学びが終る。

12日(水)午前中、聖書を学び祈る会。エステル記を取り上げる。異国の地に暮らすディアスポラのユダヤ人たちの困難と、その中からの希望と願いが込められた文学作品と言える。しかしユダヤ人迫害に対する復讐が凄まじい。この辺りがイスラエル史の興味深い点ではあるのだが。

13日(木)小雨の中を午前中、散歩。午後、NCAのリモート講座「日本キリスト教史を読む」で、賀川豊彦を取り上げる。2時間しゃべり続けるとさすがに疲れて声が涸れてくる。この講座は全国各地で60人ほどの人が熱心に視聴してくれている。画面上で何人かの知己の方々に挨拶する。

14日(金)午前中、東京医科歯科大学病院皮膚科の受診。ジンマシンはほぼ治まっているようなので、月一度から6週間毎の受診になる。帰宅すると、大木英夫先生の訃報が入っていた。93歳とのこと。東神大闘争ではお互い激しく対立する立場だったが、不思議にもプライベートでは交流が続き、賀川豊彦献身100年記念プロジェクトで、私の司会で大木先生と古屋安雄先生の対談をしている。午後、大木先生を偲びながら散歩。

15日(土)午前中、散歩。午後、会堂清掃で須賀さん一家が来てくれる。明日の説教準備と来週の女子学院での講演の準備。(戒能信生)

 

2022年10月16日 午前10時30分

聖霊降臨節第20主日礼拝(No27

司式 野口 倢司

前  奏  黙想     奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  5

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編56・1-14

讃 美 歌  503

聖書朗読  イザヤ書25・1-10

ルカ福音書13・10-19

祈  祷

讃 美 歌  548

説  教  「ある安息日の癒し」

戒能信生牧師

讃 美 歌  530

使徒信条  (9341A

献  金             高岸 泰子

報  告

頌  栄  91

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(休校)

・野口写真館開店

・ライブ配信担当・荒井久美子

・礼拝堂の後方に飲み物が用意されています。、水分補給にご利用ください。

2022年10月8日土曜日

 

牧師の日記から(387

102日(日)主日礼拝。ルカ福音書131-5の講解説教「災難に遭った人々」。ルカ福音書独自の伝承だが、事件や事故に巻き込まれて亡くなった人に罪があったからではないとイエスは断言している。いわゆる因果応報論を断固として否定するのだ。最近マスコミを騒がせているカルト宗教の問題は、この因果応報の考え方がまだ人々の心の奥底に潜んでいる事実を示している。その意味でこのイエスの言葉は現代社会に通じている。

3日(月)今週木曜日にNCA運営委員会があるので、そのアジェンダ作成の作業。夕方、都バスに乗って目白の神学校へ。図書館で調べものをした後、授業。この日は、新島襄について受講生たちのリーディング・レポート。期せずして新島の教派合同反対論が取り上げられる。しかしアメリカに始まった教派(Denomination)の理解は容易ではない。そもそもこの国において、圧倒的少数派であるキリスト教がいくつもの教派に分かれている必然性があるのか。そこに合同教会である日本基督教団の意味がある。

4日(火)午前中は錦糸町の賛育会病院で内科の定期検診。長く待たされたが、チャプレンの山崎正幸牧師が来て待合室で少し話す。糖尿病については経過良好で担当医が外れ、主治医一本の治療に戻る。昼過ぎになって急いで帰宅し、訪ねて来られた青地恵さんと『時の徴』に連載を始めた「高倉徹総幹事日記」の打ち合わせ。どうしても読み取れない箇所の確認や、註や解説の仕方について相談する。夕方から、リモートで北支区教師部例会に参加。コロナ下での千代田教会の現状について短く発題する。堀成美牧師が専門家の立場から感染症対策についてアドバイスしてくれ、当初の混乱期を過ぎて、ワクチンや治療体制が整ってきているにもかかわらず、必要以上に恐れて、合理的でない対策を続けている問題が指摘された。

5日(水)11月に予定されている柏木義円公開講演会の案内を作成し、発題者にメール添付で送って確認してもらう。来週早々この案内の発送作業をしなければならない。午後、小雨の中を少し散歩。また来週の講座「キリスト教史を読む」のレジュメの作成。

6日(木)午前中、小雨の中を徒歩で西早稲田のNCA事務所に行き、いくつかの事務仕事や教区事務所や出版局での所要を済ます。午後、NCA運営委員会。コロナ禍での各プログラムの進行状況について話し合う。

7日(金)午前中の新幹線で久しぶりに京都へ。先ず、長岡京に友人の片野真佐子さんを見舞う。少し体調を崩しておられるのだ。夕方から、修学院のセミナーハウスで、故クラウス・シュペネマン先生の記念会に出席。長くNCA理事長や館長を担ってくださった先生への感謝のスピーチをする。

8日(土)朝早く、美しい自然に囲まれた修学院の近辺を散策。午前中のプログラムに出席し、懐かしい友人たちと再会する。午後、竹中真さんのピアノコンサートの途中で中座して、新幹線で帰京。2年半ぶりに新幹線に乗っての一泊旅行だったが、なんとか体力がもった。(戒能信生)

2022年10月2日日曜日

 

2022年10月9日 午前10時30分

聖霊降臨節第19主日礼拝(No26

司式 西村 正寛

前  奏  黙想     奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-

讃 美 歌  5

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編55・1-24

讃 美 歌  370

聖書朗読  創世記32・23-33

ルカ福音書13・6-9

祈  祷

讃 美 歌  499

説  教  「実の成らない無花果の譬」

戒能信生牧師

讃 美 歌  455

使徒信条  (9341A

献  金             鈴木志津恵

報  告

頌  栄  91

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

・教会学校(休校)

・礼拝後、「私の愛唱讃美歌」橋本悠久子

・ライブ配信担当・大森意索

・礼拝堂の後方に飲み物が用意されています。水分補給

 にご利用ください。

2022年10月1日土曜日

 

牧師の日記から(386)「最近読んだ本の紹介」

吉見義明『草の根のファシズム 日本民衆の戦争体験』(岩波現代文庫)15年戦争へと至るこの国の歩みについて、歴史家や研究者の分析をそれなりに読んできたが、本書を読んでその視点と方法に瞠目させられた。当時の政治家や軍部、それを批判する言論人たちの視線ではなく、庶民・民衆の眼に戦争への道がどのように映っていたかを抉り出している。その方法に驚かされる。無名の人びとが私家版として発行した膨大な従軍記や戦争体験の手記、戦地からの手紙等から読み解くのだ。例えば、1936年に国会で「粛軍演説」をしてバッシングを受けた代議士斎藤隆夫の許に寄せられた700通近い激励や支持の手紙(こんな資料があったのだ!)を詳細に分析し、その当時の多くの人々が軍部の横暴に対する批判や立憲政治を守れという意見をもっていたこと、しかしその声が戦争反対の主張には向かわなかった事実を読み取っている。さらに検事局が発行していた『思想月報』(これがまた意外にも的を得ている!)、北支や満州における陸軍の調査報告(これが実に精確な分析をしていることに驚かされる)、アメリカ軍による日本兵捕虜からの聞き取り、戦後のGHQによる検閲による調査報告など、ありとあらゆる資料を渉猟し、しかもそれを学問的に分析している。考えさせられたのは、敗色濃厚な敗戦間際になっても、また戦地での悲惨な経験をくぐり抜けても、多くの兵士や民衆の聖戦意識は容易に鈍らなかったという事実。そこまでファシズムの根は深かったのだ。それが敗戦により一転して「敗北を抱きしめる」(ジョン・ダワー)ことになる。現在、ウクライナ戦争に対してロシア国内から反戦の動向が期待されているが、インターネット等を通じて戦争の実態を知る一部の若者たちは別として、プーチン政権打倒の動きは容易に期待できないと思わされた。

萬年一剛『富士山はいつ噴火するのか?』(ちくまプリマ―新書)中学生の時、確か「富士山は休火山だ」と教わったはず。しかし本書によれば、富士山は立派な活火山で、いつ噴火してもおかしくないという。その噴火の時期、規模、溶岩や噴煙による甚大な被害の予測について、その可能性を詳細に指摘しつつ、分らないことは分からないと言明する。世界で最も進んでいるとされる火山研究の現在を分りやすく解説してくれる。この国に原子力発電所を設置することがいかに無謀なことかが明らかにされる。

鶴見俊輔・吉本隆明『思想の流儀と原則』(中央公論社)日本の思想家の中で私が若い時期に最も影響を受けたのは、鶴見俊輔と吉本隆明の二人。その両者のそれぞれについての論考と対談が掲載されている。そのいくつかは既に読んでいるが、時間の経過を経て読み返して、私なりに戦後思想の課題が整理される感じがした。そしてこの二人の流儀の違いも感得された。お互いに敬意をもって「その『鞍部』を乗り越えようとする姿勢」(解説の大澤真幸の言葉)に改めて感銘を受けた。時代と変遷と共に多くの言説は消費されるが、時を超えて輝く思想と人格がある。(戒能信生)