2023年12月31日日曜日

 

クリスマス・カードに添えて私たち家族の近況報告

信生は、千代田教会の牧師として9年目。76歳になり、身体のあちこちにガタが来ていますが、なんとか健康を支えられ与えられた職務に励んでいます。この間引き受けてきた外部の役割を整理し、徐々にリタイアの準備を始めています。長年続けて来た各神学校への出講も今年度で終了し、日本クリスチャン・アカデミー関東活動センターの責任からも解放されそうです。残された時間をどう用いるかを模索中です。

直子さんも72歳になり、教会の薔薇や庭の草木の世話をフウフウ言いながら続けています。今年は夏の酷暑のせいか果樹が成り年で、甘柿1000個ほど、無花果は500個ほど、さらに桑の実もたくさん収穫でき、ご近所に配ったりジャムにしたりして喜ばれました。

嘉信、羊子、謙、清美さんたちも元気で、それぞれの仕事や生活に追われているようです。近くにお越しの際には、是非、声をかけてください。

202312

戒能信生、直子、嘉信、羊子、謙、清美

160-0002東京都新宿区四谷坂町4-34千代田教会

03-3351-4489 Email k-kaino@mvb.biglobe.ne.jp

 

2024年1月7日 午前10時30分

降誕節第2主日礼拝(No38

             司式 石井 寛治

前  奏  黙想     奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-18

讃 美 歌  18

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編113・1-9

讃 美 歌  370

聖書朗読  詩編139・1-9

祈  祷

讃 美 歌  434

説  教  「汝は我を知り給えり」

戒能信生牧師

讃 美 歌  368

使徒信条  (9341A

献  金             梅本順子

報  告

頌  栄  91

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、定例長老会

ライブ配信担当・西川穂

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

2023年12月30日土曜日

 

牧師の日記から(450)「最近読んだ本の紹介」

家永真幸『台湾のアイデンティティー』(文春新書)来年1月に総統選挙が予定され、その結果如何では中国の武力侵攻による「台湾有事?」が危惧される中で刊行された一冊。台湾の複雑な「戦後史」を概観してくれる。特に中国とのねじれの関係を分かりやすく説明し、多様性を尊重する台湾の民主的な社会がどのように形成されて来たのかが解説される。本書でも取り上げられているが、1970年代から80年代にかけて、台湾基督教長老教会が国民党政府から迫害を受けるという事件があった。中国の国連復帰に伴い国際的に孤立した当時の国民党政府は、戒厳令によって民主化運動を徹底的に弾圧する。長老教会は、そのような国民党政府を批判し、民主化を求める声明を公表する。すると、民主化運動家を匿ったという容疑で長老教会総幹事高俊明牧師が逮捕され、軍事法廷で懲役7年の有罪判決がくだされる。長老教会は獄中にある高俊明牧師を総幹事に再任し、政府と緊張関係が続いた。その際、台湾長老教会を支援するために、日本基督教団に台湾関係委員会が組織され、たまたま私がその末端の役割を担うことになる。当時、台湾についての書籍や研究者も少なく、日本と台湾の教会の交流史を一から調べ直して、『台湾長老教会通信』という機関誌を定期的に発行し、資料集を編纂した。やがて台湾長老教会と日本基督教団との協約が改訂され、釈放された高俊明牧師を招いて盛大なイベントを行なったりもした。中国の国連加盟に伴って、中国の教会との交流はNCC(日本キリスト教協議会)が担当し、台湾長老教会との関係は日本基督教団が担うというアクロバティックな対応を編み出すことになる。その関係で二度ほど台湾で行なわれた国際神学会議に参加する経験もした。まだ30歳代で若かったが、教団の外交政策に直接関与する貴重な経験だったことになる。

鈴木敏夫『天才の思考』(文春新書)スタディオ・ジブリのプロデューサー鈴木敏夫が、天才的なアニメ作家高畑勲と宮崎駿との共同作業を振り返りながら、それぞれのジブリ作品が生み出された内輪話や裏話を縦横に語る。おそらく今日本が世界に誇ることが出来る文化的創作物の一つはアニメ作品だろう。その良質なアニメ作品の多くが、スタディオ・ジブリから生み出された。またジブリで養成された優れたアニメーターたちが、今後のアニメ業界を担っていくのだろう。しかしそこには作品の制作だけでなく、広告・宣伝・営業・協賛企業との協力など多面的な役割を担うプロデューサー的な存在が必要ということのようだ。

磯田道史『家康の誤算』(PHP新書)NHK大河ドラマで取り上げられた家康ブームに便乗した一冊。研究者としては一寸書き過ぎの感はあるが、いずれも面白く読んでいる。この新書には、徳川幕府の基本構造と、それを打倒した明治維新政府との比較が試みられていて、興味深い。特に明治6年の地租改正についての著者の分析が興味深かった。(戒能信生)

 

2023年12月31日 午前10時30分

降誕節第1主日礼拝(No37

             司式 西川  穂

前  奏  黙想     奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-18

讃 美 歌  18

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編112・1-10

讃 美 歌  440

聖書朗読  イザヤ書12・1-6

祈  祷

讃 美 歌  365

説  教  「夜明けは近づいている」

戒能信生牧師

讃 美 歌  236

使徒信条  (9341A

献  金             戒能直子

報  告

頌  栄  92

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、入門の会「主の祈り③」戒能牧師

・週報等発送作業(ご協力ください)

ライブ配信担当・石井房恵

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。ご利用ください。

2023年12月23日土曜日

 

牧師の日記から(449)「最近読んだ本の紹介」

駒込武「植民地主義者とはだれか」(『世界』1月号)ハマスの蜂起に対する報復として、イスラエル軍のガザ地区への激しい攻撃が続いている。この問題について台湾近現代史が専門の駒込さんが『世界』に寄稿した論考に考えさせられた。19301027日、当時植民地として支配していた台湾で、霧社事件が勃発する。抑圧された山地の先住民が蜂起して、134名の日本人(女性や子どもも含む)を殺害した事件だ。これに対し、台湾総督府及び日本軍は、軍用機まで投入して徹底的な報復作戦を展開した。結果として霧社近辺の山地住民の八割近くが殺されたとされている。つまり90年前にガザ戦争と同じジェノサイド報復がこの国にもあったのだ。駒込さんは、ほとんど忘れられている霧社事件とガザ戦争とを結びつけて、「台湾とパレスチナを貫く問い」を私たちに投げかけている。

松田明三郎『詩集 星を動かす少女』(福本書店)教会の印刷室にあったもので、伊藤地塩さんから松野ヤスコさんへのプレゼントという詞書きがある。著者の松田明三郎先生は、東京神学大学の旧訳聖書学の教授だったが、私が入学した時には隠退されていてお会いしたことはない。ただ「星を動かす少女」という詩の作者だということは知っていた。改めて松田先生の詩を感銘深く味読した。例えば「復活」という詩。「枯れたように黒ずんでいた/柿の樹の梢に/点々と踊っている/若い芽の群を見て/どうして復活を/信じないでいられようか」。あるいは「粘土細工」という詩。「粘土を捏ねて/小さな壺を造った/歪んだ不細工なものではあるが/創作のよろこびはある/私は混沌から/宇宙を創造したものの/限りなき歓喜を思った。」他にも、物語詩が興味深かった。

アーシュラ・ル・グイン『赦しへの四つの道』(早川書房)初期の作品『闇の左手』でSF作家としてデビューしたル・グインが、『ゲド戦記』などのファンタジー小説を経て取り組んだエクーメン・シリーズの短編集。未来世界に舞台に借りて、奴隷制やジェンダー差別の問題を鋭く取り上げている。特に本書は、『ゲド戦記』の第4巻『帰還』を経て執筆されているだけに、フェミニズムの視点ヘの転換が注目されるだろう。SF小説の世界に、現代社会への問題提起を持ち込んだ秀作と言える。

沢木耕太郎『旅のつばくろ』(新潮文庫)新幹線のグリーン席に乗ると(最近はシルバーパスを利用して3割引きで利用している)、JRのPR誌を手に取ることがある。そこに沢木耕太郎のエッセーが連載されていて、時折目を通していた。この人のエッセーは、どんな商業雑誌に書いたものでも手を抜かず一定の水準を保っていることに感心していた。それが文庫本になったので目を通した。コロナ禍後、ほとんど旅行しなくなったこともあり、久しぶりに旅をしたいと思いながら読まされた。年を取ると旅をしなくなることを改めて思い知らされた。(戒能信生)

 

2023年12月24日 午前10時30分

待降節第4主日合同礼拝(No36

             司式 野口 倢司

前  奏  黙想     奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-18

讃 美 歌  242(4節のみ)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編111・1-10

讃 美 歌  240

聖書朗読  イザヤ書11・1-19

祈  祷

讃 美 歌  247

説  教  「狼は子羊と共に宿り」

戒能信生牧師

讃 美 歌  248

使徒信条  (9341A

聖 餐 式  配餐 石井寛治、高岸泰子

讃 美 歌  81

献  金            石井摩耶子

報  告

頌  栄  92

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(合同礼拝に合流)

・礼拝後、愛餐会(1:30まで)

燭火讃美礼拝(18:00)司式・戒能牧師、聖書朗読・釜坂由理子、奏楽・内山央絵、奨励・西川穂神学生、(野口さんのビーフ・シチュウとヨルダンのワイン)

ライブ配信担当・西川穂

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。

2023年12月16日土曜日

 

牧師の日記から(448

1210日(日)主日礼拝。今年のアドベントはイザヤ書のメシア預言を少しずつ取り上げている。この日は710-17の講解説教「インマヌエル預言」。シリア・エフライム戦争の危機の中で、ユダの王アハズに面談する際、イザヤは自分の小さい息子を伴っている(3節)、また徴として「乙女が身籠って男の子を産む」と預言する。この預言者のドメスティック(家庭的)な側面に留意せざるを得ない。そこにこの預言者の特質があるのではないだろうか。礼拝後、向山功さんの『私の愛唱讃美歌』。小学生の頃から青山学院で育てられた経験を紹介されて印象的だった。

11日(月)午後2:00に南北線の終点浦和美園駅で、常盤陽子さんと落ち合う。ここから15分ほどタクシーに乗ると、茨木啓子さんが生活しているグループ・ホームに行ける。2年前から軽度の認知症のためご自宅近くのこの施設に入所されているが、コロナ禍で面会に制限があった。ようやく緩和されて陽子さんと二人でお訪ねすることができた。啓子さんは少しふっくらしてお元気そうで、面会室でいろいろお話しした。教会のいちじくジャムをお土産に持っていくと、とても喜ばれた。不自由な面もあるようだが、それでもニコニコしながら日常生活について話してくれた。今日の聖句を読んで短い奨励をし祈った。またお訪ねする約束をして3時半頃失礼する。タクシーを呼んで浦和美園駅へ。私は途中、駒込で降りて、そのまま山手線で目白の日本聖書神学校へ。「日本キリスト教史の授業」の授業でこの日は北森嘉蔵を取り上げる。

12日(火)午前中、郵便局に行き、久しぶりに四ッ谷界隈を散歩する。夕方から、山口里子ゼミにZoomで参加。6年間続いたこのマルコ講座も今年度一杯で修了の予定。70人ほどの固定的な受講者がおり、もったいない感じがする。何らかの形で継続の可能性を考えたい。

13日(水)午前中、聖書を学び祈る会は休止。午後、近所で住宅建設をしている業者の現場責任者が来て、教会の駐車場を週日貸してくれないかと言って来る。ちょっと逡巡したが、駐車場がなくて困っている様子と、教会財政のことも考えて引き受けることとする。12月から4月末までとのこと。早速会計さんに報告して相談しなければならない。

14日(木)午後、NCAの事務所に電話して、特別な用件がないことを確認してこの日はサボることとする。『柏木義円研究』誌の原稿依頼のメールを執筆予定者に送る。我が家のクリスマス・カードの宛名書きと署名をなんとか完了。この年中行事もいつまで続けるのかを考える。

15日(金)早速この日から、駐車場の使用が始まる。軽乗用車やトラックが三台ほど駐車している。午前中、辰巳の高岸徹・泰子さん宅を訪ね家庭集会。今日の聖句を読んで短く祈る。徹さんの介護度が要介護5と認定されたとのこと。やはり歩行の困難が反映しているのだろう。近所の老人施設に入居申し込みをしたが、1年待ちとのこと!(戒能信生)

 

2023年12月17日 午前10時30分

待降節第3主日礼拝(No35

             司式 高岸 泰子

前  奏  黙想     奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-18

讃 美 歌  242(3節のみ)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編110・1-6

讃 美 歌  236

聖書朗読  イザヤ書9・1-6

祈  祷

讃 美 歌  245

説  教  「みどり子の誕生」

戒能信生牧師

讃 美 歌  275

使徒信条  (9341A

献  金             石井寛治

報  告

頌  栄  92

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・教会からのクリスマス・カードに出来ればひと頃添えてご署名ください。明日発送の予定です。

ライブ配信担当・荒井久美子

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

 

2023年12月9日土曜日

 

牧師の日記から(447)「最近読んだ本の紹介」

柄谷行人『帝国の構造』(岩波現代文庫)柄谷行人の交換様式論で、帝国の構造を分析するとどうなるかが展開される。特に、帝国の中心部とその周辺、さらに亜周辺の地政学的な差異が、どのような結果を伴うかが示される。具体的には、中国(中心)と朝鮮やベトナム(周辺)、そして日本(亜周辺)の位置関係から、言語や文字の成り立ちが取り上げられる。いずれも先進文明である中国の決定的な影響を受け、文字として漢字が受容される。朝鮮やベトナムでは、科挙制度が導入され官僚制が成立するが、やがて独自の民族文字が作られ、現在では漢字は放棄されている。他方、日本でも万葉仮名から独自の仮名と片仮名が作られる。しかし漢字が放棄されることはなく、現在も漢字混じり文が用いられている。そこに亜周辺の位置にあるこの国の特質を読み解いている。それはこの国に官僚制(科挙制度)が育たなかったことと関係するというのだ。このような分析に刺激されて、ここからは私の感想。最初に日本語に翻訳されたヨハネ福音書は、幕府による鎖国下、マカオで宣教師ジョナサン・ゴーブルが三河の漂流漁民の助けを借りて訳したものだった。それが全文片仮名だった(漂流漁民たちは片仮名しか書けなかったのだ)。つまり日本初の聖書は民衆語に翻訳されたのだった。ところがその後明治期になってプロテスタント教会で公式に採用されたのは、漢訳聖書をもとにした文語訳聖書で、荘重な漢語風の文体を特徴とする。他方、朝鮮語訳聖書は、北京に留学生した両班出身の学生たちが持ち帰って翻訳したとされる。その際、留学生たちは、聖書を漢字混じり文ではなく、何故か全文ハングル(平仮名)で翻訳したのだった。それがその後の朝鮮のキリスト教会の形成に決定的な影響を与えたのではないだろうか。つまり日本のキリスト教は知識層に入り、韓国のキリスト教は民衆に定着したとされるのだ。柄谷の周辺と亜周辺の分析が、聖書翻訳の歴史とどう絡むのかを考えさせられる。

長谷川博隆『ローマ人の世界』(ちくま学芸文庫)共和制時代のローマ史研究の碩学が、古代ローマ時代の人々の生活がどうであったのかについて書いたエッセーがまとめられている。例えば「ローマ人はどれくらい字が読めたか」では、当時の民衆の識字率についての検証が興味深い。元老院などの上流市民たちがラテン語、ギリシア語を自由に用いていたことは当然として、一般のローマ市民(職人や商売人、軍人)などがかなりの程度文字の読み書きが出来たと推測されている。特に共和制時代のローマ軍は、市民たちによって構成されており、軍隊が読み書きの慣習を定着させ、それが市民たちの政治意識にもつながっているというのだ。イエスの時代のユダヤに駐屯していたローマ兵たちは読み書きが出来たようだ。確かにルカ福音書7110に登場する百人隊長は、知識人として描かれていると言える。(戒能信生)

 

2023年12月10日 午前10時30分

待降節第1主日礼拝(No34

             司式 石井 寛治

前  奏  黙想     奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-18

讃 美 歌  242(2節のみ)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編109・1-31

讃 美 歌  231

聖書朗読  イザヤ書7・1-17

祈  祷

讃 美 歌  244

説  教  「インマヌエル預言」

戒能信生牧師

讃 美 歌  532

使徒信条  (9341A

献  金             荒井 眞

報  告

頌  栄  92

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、礼拝後、「私の愛唱讃美歌」向山功

ライブ配信担当・荒井久美子

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

2023年12月2日土曜日

 

牧師の日記から(446)「最近読んだ本の紹介」

エヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』世界的なベストセラーが文庫化されたので一読。上下巻併せて800頁近くあるが、翻訳も優れていて、一気に読ませる。ネアンデルタール人を初めいくつもあったライバルを消滅させて、ホモ・サピエンスだけがどのようにして生き延び、勢力を伸ばし、この地球を支配するようになったのかの全歴史が語られる。認知革命、農業革命、科学革命などの段階を経て現在の興隆へと至るが、その後のこの地球は、そして人類はどうなるだろうと問いが投げかけられる。以前読んだジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』と共通するが、興味深いエピソード、豊富なデータと最新の科学研究の成果を重ね合わせ、説得力をもって語られる。ただ、引用されるデータが膨大すぎて、一度読んだだけでは消化し切れない。再読が必要だろう。私が興味を引かれたエピソードを一つ紹介すると、1744年に、スコットランド長老派教会の二人の牧師が、亡くなった牧師の妻や子どものために年金を支給する制度を計画した。その時彼らがしなかったことに注目せよと著者ハラリは言う。「彼らは答えを啓示してくれるように神に祈らなかった。聖書や古代の神学者の作品に答えを探すこともしなかった。抽象的な神学的義論も始めなかった。」その代わりに、統計学に詳しい数学者の助けを借りて、データを収集し保険数理表や人口統計学(これらの学問はまだなかったが、そのひな形)を駆使して、必要な拠出額を計算したという。こうして始まったのが生命保険会社で、今もScotish Widowsとしてロイズの傘下に立派に現存するという。こういう指摘とユーモア?に、本書の特徴があると言える。

山口希生『ユダヤ人も異邦人もなく』(新教出版社)最近、福音派の聖書学者たちが注目しているNPPNew Perspective on Paul)=「パウロ研究の新潮流」についての概説書。パウロ理解に重大な変更を迫る新約聖書学からの問題提起を判りやすく解説してくれる。宗教改革者マルティン・ルターが、16世紀のカトリック教会の腐敗と信仰理解(例えば贖宥状の販売)を批判する文脈で、ロマ書やガラテヤ書のパウロのユダヤ人批判、律法主義批判を引用した。それがあまりにも説得的だったために、ユダヤ教そのものが誤解されてしまったという指摘。さらに言えば、パウロが激しく論難したのは、異邦人に割礼を要求するユダヤ人キリスト者たちの主張に対してであって、ユダヤ教そのものに対する非難ではななかったとする。これらのことは、既に聖書学の世界では指摘されてきたことだが、福音派の人々にとっては従来の贖罪信仰を揺るがすことにつながるという。E.P.サンダースやジェイムズ・ダンなどの比較的穏健な聖書学者たちの貢献が大きいようだ。ただこの流れが、贖罪信仰そのものを問うことにつながるかどうかはまだ判らない。(戒能信生)

 

2023年11月26日日曜日

 

2023年12月3日 午前10時30分

待降節第1主日礼拝(No33

             司式 橋本  茂

前  奏  黙想     奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-15

讃 美 歌  242(1節のみ)

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編108・1-14

讃 美 歌  229

聖書朗読  イザヤ書2・1-5

祈  祷

讃 美 歌  241

説  教  「イザヤの平和預言」

戒能信生牧師

讃 美 歌  424

使徒信条  (9341A

献  金            荒井久美子

報  告

頌  栄  92

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、定例長老会

ライブ配信担当・西川穂

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

 

 

牧師の日記から(445)「最近読んだ本の紹介」

黒柳徹子『続・窓ぎわのトットちゃん』(講談社)国民的ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』の続編。トモエ学園を卒業して以降の戦時下の疎開生活や、敗戦後の上京、そしてNHK専属テレビ女優としての活躍が綴られる。他の著書で読んだことのあるエピソードも多いが、改めてこの稀有な女優の人柄と、芸能界を生き抜いた軌跡に驚嘆する。ただ当然のことながら、前著のような幼い子どもの視点から描かれた独特のファンタジーの要素は失われている。でも楽しく読めた。

斎藤貴男『カルト資本主義』(ちくま文庫)1980年代から90年代の超能力研究やオカルト・ビジネスの興隆を紹介する。世界救世教の万能微生物EMや、ヤマギシ会の現状、アムウェイ商法などの実態が暴かれている。旧統一協会の問題が多額の献金や宗教Ⅱ世の問題とからめて議論されているが、現在の社会にこのような一種のオカルティズムやカルト商法が蔓延するのは何故かが問われる。キリスト教も含めて既成の宗教が生命力を失っている事実が、このような事態が生んでいるとも言える。

間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書)ガンディーの非暴力思想がどのように生み出されたかを、批判的研究も参照にしながら辿っている。生まれ育った家庭、早期の結婚、イギリス留学、南アフリカでの弁護士としての活動、そしてインドに帰国してイギリスからの独立運動に関わっていく経緯が、特にガンディー自身の宗教的思想的探求と共に紹介される。独立を果した後、ヒンドゥー教徒とムスリムとの激烈な宗教対立に対して宥和と非暴力を訴えたガンディーは、一方で「まだ自分自身の解脱を考えていた」という指摘は考えさせられた。実際に家族、特に妻にはどう映っていたか、また反逆した長男からはどう見えていたのかという視点が突きつけられる。偉大な宗教思想家の究極的な獨我主義は家族にとっては「ほとんど暴力的に見える」と著者は指摘する。

アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』(ハヤカワ文庫)ミステリーの女王と言われるアガ・サクリスティーのクリスマスに関する短編集。ミステリーではなく、ファンタジー風の短編と詩を組み合わせたオムニバス。読書会「キリスト教と文学」の課題図書として読んだ。クリスティーの信仰理解や宗教観の一端が窺われる。彼女自身は英国国教会の信徒だったが、小説に登場する「灰色の脳細胞」のエルキュール・ポワロはカトリック信者として描かれている。

久米宏『久米宏です』(朝日文庫)1985年から2003年までニュースステーションのキャスターとして活躍した著者の一種の自伝。歌謡番組を変えたと言われる「ベスト・テン」や、報道番組を一新した「ニュース・ステーション」の内幕が紹介されて興味深い。私自身がこの時期この番組を観ていたので、自分があの時代(バブル経済と自民党政権の崩壊)に何を考えていたのかを振り返させられた。(戒能信生)

2023年11月19日日曜日

 

2023年11月26日 午前10時30分

聖霊降臨節第27主日(収穫感謝合同)礼拝(No32

             司式 野口 倢司

前  奏  黙想     奏楽 釜坂由理子

招  詞  93-1-15

讃 美 歌  32

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編107・1-43

讃 美 歌  386

聖書朗読  エレミヤ書23・1-6

      ルカ福音書21・37-38

祈  祷

讃 美 歌  389

説  教  「オリーブ畑はどこに」

戒能信生牧師

讃 美 歌  378

使徒信条  (9341A

献  金            橋本悠久子

報  告

頌  栄  83

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、入門の会「主の祈り」②戒能牧師)

ライブ配信担当・西川穂

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

2023年11月18日土曜日

 

牧師の日記から(444)「最近読んだ本の紹介」

三宅威仁『八色ヨハネ先生』(文芸社)現役の同志社大学神学部教授が書いた小説。神学部教授を主人公とし、妻と一人娘を突然失う衝撃からどのように再生するかが描かれる。現代の学生たちにも読める仕方で、キリスト教信仰のこと、さらに神義論を判りやすく語る。ある書評で知って読みたいと思っていたところに、向山功さんが持って来て貸してくれた。この神学校はリベラルな学風で知られ、「同志社神学部に行くと信仰をなくす」と喧伝されているが、その現代的な信仰理解と神秘体験の捉え方に感心した。今の学生たちはどのように読むのだろうか。

森まゆみ『暗い時代の人々』(朝日文庫)タウン誌『谷根千』の編集者だった著者が、昭和初期から戦時下を生きたリベラリストたち10人を取り上げる。中でも、初期の女性運動家・山川菊栄や、暗殺された山本宣治(両親がクリスチャンだった)など、名前だけで詳しくは知らなかったので、改めて教えられることが多かった。文化学院の創立者・西村伊作や、大正デモクラシーの旗手・吉野作造についても、新しく示唆されることがいくつもあった。学者の専門的な研究ではなく、暗い時代に「同調圧力に屈することなく自由な精神を貫いた人々」の存在を掘り起こし、判りやすく紹介したお奨めの一冊。

野嶋剛『日本の台湾人』(ちくま文庫)この国で在日台湾人の存在はある意味で隠されている。即席麺を開発した安藤百福などは、「朝ドラ」の主人公にまで取り上げられたのに、台湾出身者だった事実にはほとんど触れられなかった。この文庫は、そのような台湾にルーツをもつ人々を取り上げて、その独特の屈折や複雑な想いを紹介してくれる。経済評論家として活躍したリチャード・クー、歌手のジュディ・オング、作家の陳舜臣、邱永漢などの祖国と日本への想いが興味深い。実は私の父は戦前の一時期、台南メソヂスト教会の牧師だった。そのこともあって、1980年代の台湾民主化運動に多少の関わりをもち、台湾長老教会と日本の教会との関係史をまとめて書物にしたこともある。今また、台湾と中国との軍事的緊張が取り沙汰され、それがこの国の軍備増強に拍車をかけている。台湾とそこに生きる人々への関心を持ち続けたいと願っている。

藤野裕子『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』(中公新書)この国では1970年代を最後に、学生や民衆の大規模なデモや暴動は起きなくなっている。それが社会の成熟なのか、それとも活力の停滞なのか議論の分かれるところだろう。しかし近代日本では、明治初期の「新政反対一揆」や「秩父民権暴動」などが続発した。また日露戦争直後の「日比谷焼き討ち事件」で、下町一帯のキリスト教会が被害を受けている。大正期には「米騒動」もあった。それに加えて関東大震災後の朝鮮人・中国人虐殺も、民衆による暴力だった。これらをつないで捉える時、何が見えてくるかが取り上げられていて興味深い。(戒能信生)

2023年11月12日日曜日

 

2023年11月19日 午前10時30分

聖霊降臨節第26主日礼拝(No31

             司式 釜坂由理子

前  奏  黙想     奏楽 梅本 順子

招  詞  93-1-15

讃 美 歌  32

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編106・1-48

讃 美 歌  288

聖書朗読  出エジプト記3・7-10

      ルカ福音書21・34-36

祈  祷

讃 美 歌  507

説  教  「眼を覚ましていなさい」

戒能信生牧師

讃 美 歌  575

使徒信条  (9341A

献  金             橋本 茂

報  告

頌  栄  83

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、オリーブの会「羊の群れ8788号を読んで」司会・橋本 茂 

ライブ配信担当・荒井 眞

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。

2023年11月11日土曜日

 

牧師の日記から(443)「最近読んだ本の紹介」

鷲巣力『加藤周一を読む』(平凡社ライブラリー)著者は、編集者として終生加藤周一に寄り添い、加藤周一の蔵書を元に設立された現代思想研究センターの責任を担っている。本書は、岩波書店から刊行された『加藤周一自選集』の解説に大幅に加筆して、この稀有な知識人の全作品を通してその生涯を追っている。私は加藤周一の良き読み手ではなかったはずだ。『羊の歌』や『日本文学史序説』、『日本人の死生観』には目を通しているが、朝日新聞に折々に連載されるコラムを読むくらいで、フランス、カナダ、ドイツなどの各大学で教えた戦後日本を代表する知識人としての理解しかなかった。しかし高校生の頃、弁論部の顧問と相談して、部費で『朝日ジャーナル』を購読していた。そこに加藤周一の自伝小説『羊の歌』の連載が始まったのだ。高校生の私にどこまで読み取れたか覚束ないが、それでも毎週熱心に読んだことは覚えている。それは、それまで読んできたものとは全く異質の印象だった。本書で『羊の歌』の文体が詳細に分析されているが、自分が無意識のうちにこの人の文章から影響を受けていることを改めて実感した。

沼田和也『弱音をはく練習 悩みをためこまない生き方のすすめ』(KKベストセラーズ)同じ北支区の王子教会の沼田和也牧師が、生きづらさを抱えて相談に来る人々との出会いを紹介したエッセー集。前著『牧師、閉鎖病棟に入る』でご自身の発達障害と向き合う経験を紹介していたが、本書でも著者自身の引き籠もりの経験やいくつもの失敗や挫折が率直に吐露されている。読んでいて、牧会カウンセリングの現場に立ち合うような印象がある。ところどころに聖書の言葉が引用されているが、通例の建徳的な解釈ではなく、著者自身の実感からの疑問や問いが投げかけられる。あとがきの最後に「危険と紙一重の密室へ、ようこそ」と結ばれているのが印象的。

大江健三郎『親密な手紙』(岩波新書)著者の最晩年に、岩波書店のPR誌『図書』に連載され随筆に手を入れて死後出版された。連載中に何篇かには目を通しているが、久しぶりに大江さんの文章に触れて、感慨深かった。障害を負う光さんやご家族との日々、友人たちとの交友や幅広い読書体験の中からのエッセーは、心に響くものがある。その独特の文体にはいつもながら引っかかるが、しかしそこからこちらの思索へと誘われる。あのゴツゴツした文体は、日本的な情緒や心情を峻拒する独自のものだが、このエッセー集にそれが端的に出ていると感じた。

田中澄江『夫の始末』(講談社)印刷室に松野俊一先生の寄贈図書として並んでいた。小説仕立てで自らの歩みを振り返る自伝小説と言える。87歳の女性作家が、夫との生涯を率直に振り返っている。著者はカトリック徳田教会の信徒で、友人のルイ神父が、指紋押捺を拒否して再入国不許可になり、それを訴えた裁判に協力してくれた。(戒能信生)

2023年11月5日日曜日

 

2023年11月12日 午前10時30分

聖霊降臨節第25主日礼拝(No30

             司式 高岸 泰子

前  奏  黙想     奏楽 内山 央絵

招  詞  93-1-15

讃 美 歌  32

主の祈り  (93-5A) 

交読詩編  詩編105・1-45

讃 美 歌  149

聖書朗読  イザヤ書41・8-12

      マルコ福音書6・45-56

祈  祷

讃 美 歌  57

説  教  「わたしだ、恐れることはない」

西川穂神学生

讃 美 歌  456

使徒信条  (9341A

献  金            萩原 好子

報  告

頌  栄  83

派遣・祝福

後  奏 

 

【本日の集会】

教会学校(休校)

・礼拝後、「私の愛唱讃美歌」条谷泉

ライブ配信担当・荒井久美子

礼拝堂の後ろに飲み物を用意してあります。水分補給にご利用ください。