2025年2月9日日曜日

  牧師の日記から(506)「最近読んだ本の紹介」

 上垣勝『それでも、希望に生きる』(日本キリスト教団出版局)友人の上垣勝牧師が、366日の聖書黙想を刊行された。本来は一日ずつ読むべきものだが、興味に惹かれて一気に一年分に目を通した。日付毎に、旧新約聖書から短い聖句が引用され、600字前後の随想が記されている(日によって長短はある)。著者の牧会生活の中で出会った信徒たちの群像、あるいは出会った人々の想い出が次々に紹介される。聖書の説明や解説は最小限に押えられ、柔らかいメッセージが語られる。読みやすく分りやすい。値段が4,000円と高価だが、お奨めの一冊ではある。

 沢木耕太郎『いのちの記憶』(新潮文庫)この著者のエッセーを読んでいつも感心させられるのは、様々な人物に出会い、しかもその人から信頼されて、ディープなインタビューが出来ていること。この本でも、例えば高倉健や美空ひばりといった人たちとの出会いが紹介されている。著者自身の魅力なのだろう。

 ドナルド・ウェストレイク『うしろにご用心!』(新潮文庫)著者は2008年に既に亡くなっている。ミステリーの世界では著者が死ぬと、売れ行きがガクッと落ちるそうだ。しかし「情けない泥棒」ドートマンダー・シリーズには、未訳なものが何冊か残っている。訳者の「あとがき」によれば、本作の売れ行き次第で、次作刊行の有無が決まるとのこと。ただ本作は、登場人物が多すぎて、プロットがゴタゴタしていると感じた。作者同様、読み手であるこちらも年をとったせいなのだろうか。

甚野博則『ルポ・超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)このところ四谷や市ヶ谷近辺の散歩の途中、立派な老人ホームが新築されていることに気づかされる。マンション建設だと思い込んでいたのに、完成してみれば高級老人ホームだったという例が少なくない。少し前まで、大型の老人ホームは郊外に建設されていた。ところが最近は、都心のど真ん中、四谷の近辺にいくつも老人ホームが出来ている。しかもその入居一時金が億を超えるものが少なくないという。本書はその腰巻きに「元『週刊文春』のエース記者による衝撃のルポルタージュ」と銘打たれているが、最近のこの業界の実態を暴いている。(戒能信生)

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