2021年12月4日土曜日

 

牧師の日記から(346

1128日(日)待降節第1主日礼拝。列王記上22章の講解説教「ミカヤの時代」。北王国イスラエルの王アハブの治世の末期、王の戦争政策にただ一人反対して投獄された預言者ミカヤを取り上げる。この預言者について詳しいことはほとんど知られていない。1980年代、台湾が国際政治で孤立して戒厳令を敷き国民を統制したとき、台湾基督長老教会は、政治犯を匿ったとして逮捕された獄中の高俊明牧師を、総幹事に再任する。そして機関紙『台湾長老教会公報』の題字の上に「時代的未該雅」(この時代のミカヤ)と掲げた。それは、まさに教会の預言者的使命を内外に示すことであった。私もこれによってこの預言者のことを初めて知ったのだった。礼拝後、入門の会で「クリスマス伝説の由来」について紹介する。キリストの誕生日を1225日にしたのも、クリスマスツリーやサンタクロースの伝説も、ずっと後に生れた習慣だった。それは、4世紀以降の教会が、地中海世界の異教的慣習や文化を積極的に取り入れ摂取したことを示している。しかし中世になってヨーロッパにキリスト教世界が成立すると、十字軍や海外宣教において、イスラムや異教徒の文化を否定・破壊していくようになる。それは現在も続くキリスト教会の課題であり問いでもある。

29日(月)夜は日本聖書神学校の授業で、鈴木正久を取り上げる。教団議長として「戦争責任告白」を発表し、また財政自立と機構改正を推進した稀有な指導者だが、今や歴史上の人物として神学生たちに教えなければならない。その信仰理解と特異な牧師像を語り伝える必要があるだろう。

30日(火)午前中、青地恵さんが来訪される。1970年前後、教団の総幹事秘書を務め、教団の生き字引と言われた女性。ご遺族から託されている高倉徹先生のその当時の日記の翻刻作業が出来るのは、この人をおいて他に見当たらない。私よりも高齢であるが、お元気で矍鑠としており、快くお引き受けいただいた。これも来年の大きな仕事になる。午後、緑陰書房の編集者・南里友樹さんが来られて、石浜みかるさんの満州基督教開拓村についての原稿の出版について相談。私から教団出版局や新教出版社に当たってみることになった。関東大震災後の賀川豊彦たちの被災者救援活動の資料については、別の書店から書籍化する可能性を、南里さんが検討することになり、『賀川豊彦研究』のバックナンバーを持って行かれた。これも実現するならかなりの仕事量になりそう。

121日(水)いよいよ12月に入った。例年のことだが、クリスマスカードを書き始める。私は年賀状を出す習慣はないので、これがその代わりでもある。お世話になった人々が次から次へと亡くなっていくのが寂しい。直子さんが、高倉徹日記を一枚一枚コピーしてくれる。

2日(木)午後からNCAの事務所に行き、事務仕事。教団出版局の秦さんに石浜みかるさんの原稿を託す。来週の連続講座のレジュメを早稲田奉仕園のスタッフに渡して配信案内をしてもらう。(戒能信生)

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