2021年5月15日土曜日

 

牧師の日記から(317

59日(日)主日礼拝。ルカ福音書627-38の講解説教「汝の敵を愛せよ」。この金言が、東地中海の辺境の地から始まったキリスト教が数世紀を経て地中海全域に拡がっていくなかで、決定的な意味をもったとされる。ギリシアやローマの哲学や宗教に、このような倫理は見られないからだ。しかし現代において、この「愛敵」の思想をどのように受け止めるべきだろうか。マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」としている。これは、「愛敵」の教えの優れて現代的な解釈と言えるのではないか。具体的な敵がすぐに思い当たらない恵まれた私たちにとって、自分に直接関わりのない隣人を愛するように勧めているのだ。

10日(月)午前中、郵便局で教会宛の献金振込を引き出す。午後、西早稲田のNCAの事務所で定期刊行物の発送などの事務作業。帰宅後、準備をして、夜は日本聖書神学校の授業。この日は海老名弾正を取り上げる。

11日(火)このところ、婦人矯風会の創設者矢嶋楫子について調べている。浩瀚な伝記や三浦綾子の評伝はあるものの、楫子自身の文章がほとんど見つからないで往生している。しかし考えてみると、明治初期の女性が自分の内心の心情を表現する手段は限られていた。思いついて楫子の折々の短歌に注目している。キリスト教の歴史では、アウグスチヌスの『告白録』以降、自己の内心の葛藤や転換を表現する伝統がある。しかしこの国の文化には、内面を吐露することは好まれず、わずかに和歌に自分の心情を詠み込む習わしがあった。夜は山口里子さんの聖書ゼミをZoomで受講。

12日(水)午前中、近くの皮膚科で受診。時折急に腕や足が痒くなって腫れ上がる症状で、ジンマシンのせいだという。その原因は特定できないが、ストレス等が考えられるとのこと。思い当たるフシはないのだが・・・。抗ヒスタミン剤を処方され、症状は治まっている。午後は、明日から始まるNCAの連続講座「日本キリスト教史を読む」の準備。

13日(木)午後2時から「日本キリスト教史を読む」の第1回。既に20172019年の3年にわたって続けた講座だが、アンコール開講の要望が多く、リモートで開講することになった。この日は、前史としての中国伝道の歴史と、幕末期宣教師の来日と日本プロテスタント教会の出発を紹介する。全国から60名を越える受講者で有り難いが、リモートでどれだけ伝わっただろうか。Zoomを用いての講義は経験してきたが、60名を超えると、いくら双方向だと言っても反応が分らないのでやりにくい。

14日(金)午前中、門前仲町の歯科医で定期検診。歯も悪くなり、耳も遠くなり、視力も随分落ちてきている。つくづく73歳の自分の年齢を考えさせられる。Covid-19の感染拡大は収束せず、緊急事態宣言も延長された。30日に予定されている松野俊一名誉牧師の記念礼拝・納骨式を延期すべきかどうか、長老の皆さんにメールで意見を徴し、またご遺族とも相談する。(戒能信生)

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