2026年9月11日金曜日

 

牧師の日記から(570)「最近読んだ本の紹介」

グエン・RP・ノルマン『カナダ合同教会 日本での100年』(教文館)明治初期からカナダ・メソヂスト教会がこの国に宣教師を派遣して伝道を展開して来た。その通称「カナ・メソ」の1873年から1923年までの歩みを、宣教師たちのAnnual Report(年次報告)をもとにまとめた通史。つまりミッション・ボードや宣教師たちの側から見た日本宣教の記録なのだ。結果として東京や静岡、山梨などの各地に設立された教会、さらに東洋英和、静岡英和、山梨英和等の女学校、さらに関西学院の設立をめぐる宣教師たちの働きが活写されている。翻訳者の後藤哲夫さんから、この後編(19221973年を取り上げた第二部)の翻訳について協力を求められているのだ。日本の教会の歴史が宣教師たちの眼にはどう映っていたかを知ることができる貴重な文献。しかも著者が女性であるだけに、男性宣教師たちとの対立や葛藤、さらに宣教師間の宣教理解の相違などにも触れられていて興味深い。著者の夫ハワード・ノルマンの弟ハーバード・ノーマン(日本研究で知られ外交官)が、戦後すぐの時期のマッカーシー旋風に巻き込まれて自死したことから、いまだにカナダではスパイ視されていて、本書はカナダで出版できず、日本で初めて刊行されたいわく付きの書。

赤根智子『戦争犯罪と闘う』(文春新書)プーチン・ロシア大統領やネタニヤフ・イスラエル首相に対する逮捕状を発した国際刑事裁判所(ICC)の所長を務める著者の手記。法学部を卒業後、検事に任官、法務官僚としてのキャリアを積み、大学教員を経て2018年にICCに赴任したという。以前、ある人権問題の裁判を傍聴したとき、国側の代理人として女性検事がずらりと並んで驚いたことがある。聞けば法務省のキャリア官僚の男女比は、女性の方が多いとのこと。新憲法のもとで戦後の法務省が女性に門戸を開いてきたことの成果の一つが、赤根さんの存在と言えるのではないか。大国の横暴と人権無視に対して敢然と抵抗し対峙する国際刑事裁判所と赤根所長にエールを送りたい。

 見田宗介『白いお城と花咲く野原』(河出書房新社)198586年に朝日新聞に連載された論壇時評の再刊。今から40年前の時評が、全く色あせることなく、2026年現在の世界を照射する。ソ連の崩壊やオウム真理教事件、東日本大震災が起こる以前の時代と現在とを架橋する稀有な分析と視点に改めて学ばされる。(戒能信生)

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